「公共善」と「公共悪」のはざまにて…今年一年を振り返って〜いざ、夢多き未来へ、そして、激震の年明け!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
「公共善」と「公共悪」のはざまにて…今年一年を振り返って〜いざ、夢多き未来へ、そして、激震の年明け!!??


 

 「公共善(=共通善)を愛するあらゆる者は、(中略)残酷で救いのない苦悩に苛(さいな)まれる」―。こんな逆説的な言葉を反芻(はんすう)し続けた一年だったような気がする。『従順さのどこがいけないのか』(将基面貴巳著)という本の中で、20世紀フランスの哲学者、シモ−ヌ・ヴェイユがこう語ったということを知った。著者の将基面さんはさらにこう解説する。「権威や権力、そして社会一般の通念は、それに服従することを求め、服従しない者に制裁を加えるのが常だからです」。ひと言でいえば、「出る杭(くい)は打たれる」ということであろう。

 

 「イ−ハト−ブ図書館の実現に向けて」―。私は今年の元日付の当ブログにこう書きつけた。そして一年たった大晦日の今日、その実現どころか「立地場所」の選定がさらに9カ月先延ばしされるという異常事態に直面している。「公共善(共通善)」について、著者はこう書いている。「文字通り、人々が共通に善いものとみなすものであり、ある共同体全体の利益を意味します。…それと正反対のものは、一部の人々だけの利益です。特に権力者や、彼らがひいきにする一部の人々だけがせしめる利益のことです」。闇にうごめく“利権”疑惑…。公共施設の代表格である足元の「新花巻図書館」がいままさに、そんな危機のただ中に投げ出されつつある。

 

 「公有地の拡大の推進に関する法律」(公拡法)はその第1条でこう定めている。「公有地の拡大の計画的な推進を図り、もって地域の秩序ある整備と公共の福祉の増進に資することを目的とする」―。つまり、まちづくりを推進するため、当該自治体に土地の優先取得権を与える法律である。旧新興製作所跡地(花巻城址)の譲渡に際しても当然、同法が適用された。「由緒あるこの土地をふたたび、市民の手に」という機運が高まりつつあった、そんな師走のある日…

 

 「多額の費用がかかるため、当市がただちに当該土地全部を取得することを決定することはできない」(上田東一市長)―。さかのぼること9年前の(2014年)12月25日、市民はまるで“悪夢”のようなクリスマスプレゼントにのけぞった。この年に誕生した上田市政の“失政”の始まりだった。あれから足掛け10年、「秩序ある整備と公共の福祉の増進」(公拡法)などはどこ吹く風、まちのど真ん中にはいまも瓦礫(がれき)の荒野と化した廃墟が無惨な姿をさらけ出している。文字通りの「公共悪」である。そして、こともあろうに…

 

 その同じ人物が今度は「税金の無駄使いだ」という市民の声に背を向けるかのように、図書館用地として花巻駅前のJR用地の取得を強行しようとしている。9年前のあの悪夢が二重写しになった。「(新興)跡地にパチンコ店とホ−ムセンタ−を誘致し、まちの活性化の一助に」―。当時、革新を標榜(ひょうぼう)するある議会会派が「取得断念」を先導し、議会の大勢がこれに追随した。またぞろ、同じような勢力図が勢いをいや増しそうな気配である。そう、「駅前の活性化には図書館と駅橋上化が欠かせない」という上田流“便法”(詐術)への同調風が…

 

 その一方で、敢然と立ちあがる市民の姿があった。Xmasイブの24日、「“夢の図書館”をクリスマスの贈り物に。新興跡地の二の舞は許さない。市有地化が決まっている病院跡地こそが最適地」―。こんなスロ−ガンを掲げた市民団体が市内のショッピングセンタ−で署名の呼びかけをした。クリスマスケ−キを抱えた買い物客が次々に応じた。この光景を目の当たりにしながら、私は胸の高まりを覚えた。「服従」から「不服従」へ…。少しずつだが、何かが確実に変わりつつあるような手ごたえを感じたのである。将基面さんは「不服従の覚悟とは何か」ということについて、以下のように述べている。これでもかこれでもかと迫ってくる重い問いかけである

 

 「『忖度(そんたく)』する人々は、ひたすら上司が望むところを察知して先回りしてでも上司の期待に添うように行動します。『忖度』する人々は自らの自由と独立を放棄し、奴隷状態に自分を貶(おとし)めています。このような人々が増えるほど、社会から自由は失われてゆきます。権威や多数派に対して従順に服従するのではなく、自分自身で『選択』することとは、他ならぬ自分自身のアイデンティティを確立し、それを守り抜くことです。『NO』というべきことをはっきり拒否できる人だけが、『YES』というべきことをはっきり肯定できるということです」―

 

 「公共善」にとって代わって「公共悪」が大手をふるって闊歩(かっぽ)するいまだからこそ、「不服従の覚悟」が必要なのかもしれない。「われ反抗す、ゆえにわれら在り」(アルベ−ル・カミュ『反抗的人間』)―。将基面さんがカミュのこの言葉をあえて引用した深い意味が少し、分かったように思った。元日の朝、私は霊峰・早池峰を仰ぎ見るのを習い性としている。城跡と隣接する病院跡地からの借景がこれまた、格別である。まさに「神々しい」としか言いようがない山容である。では皆さん、良いお年を。新しい年が夢多き一年になることを祈りつつ…

 

 

 

 

 

(写真は「公共悪」の見本みたいな旧新興跡地の荒地の光景=花巻市御田屋町で)

 

●コメント欄に霊峰・早池峰の写真。キラキラと白雪をいただく眼下には廃墟の城跡が…

 

 

※「2024・1・1」地震(令和6年能登半島地震)

  〜この一年を思考する原点の日に!?

 

 

 

<署名延長のお知らせ>

 

 

 新花巻図書館の旧病院跡地への立地を求める署名運動は全国の皆さまのご協力により、4,730筆という予想以上の賛同をいただくことができました。支援者の一人として、感謝申し上げます。行政側の動向が不透明な中、主催団体の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(代表 瀧成子)は引き続き、全国規模の署名運動を続けることにしました。締め切りは2024(令和6)年1月末必着。送付先は:〒025−0084岩手県花巻市桜町2丁目187−1署名実行委員会宛て。問い合わせ先は:080−1883−7656(向小路まちライブラリー、四戸)、0198―22−7291(おいものせなか)

 

  署名用紙のダウンロードは、こちらから。 「全国署名を全国に広げます!〜これまでの経過説明」はこちらから。署名実行委員会の活動報告などは「おいものブログ」(新田文子さん)の以下のURLからどうぞ。

 

 https://oimonosenaka.com/

 


2023.12.31:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
元日の霊峰・早池峰

2024年1月1日の霊峰はまるで、神の降臨を思わせるような厳かな表情を見せた(午前11時半、花巻市桜町の自宅から)

2024.01.01 [修正 | 削除]
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