「ご破算で願いましては」…“哲学不在”の上田市政の彼方から:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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「ご破算で願いましては」…“哲学不在”の上田市政の彼方から


 

 「この人の口からどうして、琴線(きんせん)に触れるような言葉が聞こえてこないのだろうか」―。上田(東一)市政3期目の施政方針演述が行われた、25日開催の花巻市議会3月定例会の中継を聞きながら、ずっとそんな思いにとらわれた。自らの“パワハラ”を謝罪し、その上で旧優性保護法下で差別された人たちに寄り添う兵庫県明石市の泉房穂市長(2月23日付当ブログ参照)との乖離(かいり)がまだ余韻として、残っていたせいかもしれない。そんな中、1時間以上に及ぶ演述の内容にその謎をひも解くヒントを見つけたように気がした。

 

 「イ−ハト−ブ応援寄付金(ふるさと納税)が1月末現在で41億円に達し、過去最高を記録した」―。こう胸を張った上田市長は一方で、「(宮沢)賢治の世界観は今後とも広く発信していきたい」と述べた。周辺に理解する人は少なかったが、この二つの発言が違和感なく同居することに私は以前から不思議な思いを抱いていた。「ふるさと納税」をめぐっては実はこんな失敗例があった。「銃」と「象牙」と…。私の想像力はまさに「賢治の世界観」と直結していた。

 

 3年前、当市は12万円以上のふるさと納税の返礼品として、プラスチック製のエアソフトガン(エアガン)をリストに加えた。HP掲載後に問い合わせが殺到、受け付けを終了した。エアガンは市内のメ−カ−が製造した「ウィンチェスタ− M1873 カ−ビン」。「西部を征服した銃」とも呼ばれ、インディアン(アメリカ先住民)を殺戮した忌まわしい銃だという負のイメ−ジが付きまとっていた。果たせるかな、賢治のふるさとでの“エアガン”騒動にはメデイアやネット上で批判が相次ぎ、「殺傷能力のないエアソフトガンとはいえ、対人用の武器として使用した銃を再現したもの」(上田市長)と早々にリストから除外した。

 

 その3ケ月後、今度は象牙の印鑑が返礼品として登場したが、どうしたわけかその日のうちにリストから削除されてしまった。当時、アフリカ象などの密猟で「象牙取引」が国際的な問題になっていた。担当者は「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の取引に関する条約)については正直、無知だった。ただ、エアガン騒動もあるので、今後は担当職員全員で慎重に精査したい」と弁明した。さて、「41億円」という巨額のふるさと納税を底支えしているのは“牛タン”である。市内の業者が外国産の原材料を加工・販売したのが大当たり。いまでは市財政の欠かせない金庫番の役割さえ担っている。ところで、賢治の童話に『フランドン農学校の豚』という作品がある。

 

 「一体この物語は、あんまり哀れ過ぎるのだ。とにかく豚はすぐあとで、からだを八つに分解されて、厩舎(きゅうしゃ)のうしろに積みあげられた。雪の中に一晩漬(つ)けられた」―。豚を殺すことを正当化する法律が「家畜撲殺同意調印法」である。農学校で飼われていた豚に対し、死亡承諾書が突きつけられる。恐怖心にかられた豚は捺印を拒否し続けたが、結局は同意させられる…。こんな筋書きの物語である。“賢治精神”の大切さを説く上田市長は一度でもこの作品に目を通したことはあるだろうか。ソロバン勘定を優先させるにしても、賢治の理想郷「イ−ハト−ブ」の返礼品が“牛の舌”というのではそれこそ、「あんまり哀れ過ぎ」(賢治)やしないか…

 

 “パワハラ”疑惑の渦中にあった二人の首長を見比べながら、私は明石市の泉市長の方がよっぽど賢治に近い―とつくづく、そう思ったのだった。ちなみに、当市花巻は将来都市像として、こんなスロ−ガンを掲げている。「市民パワ−をひとつに歴史と文化で拓く笑顔の花咲く温(あった)か都市(まち)イ−ハト−ブはなまき」…

 

 

 

 

 

(写真は施政方針の演述をする上田市長=2月25日午前、花巻市議会議場で=インタ−ネット中継の画面から)

 


2022.02.25:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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