“仏作って、魂入れず”―花巻の医療体制、崖っぷち〜市民の安心・安全、どこ吹く風!?:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
“仏作って、魂入れず”―花巻の医療体制、崖っぷち〜市民の安心・安全、どこ吹く風!?


 

 「一方では医師の確保、大変、至難の業(わざ)でございます」(平成27年3月定例会会議録)―。4年以上も前のこの“悪夢”のような発言が現実のものになろうとしている。鳴り物入りで登場した総合花巻病院の「移転・新築」問題の迷走劇である。市政始まって以来、最大規模の約20億円の補助金を投入したこの一大プロジェクトがオ−プンを半年後に控えた今になって、診療科目の減少など崖っぷちに立たされつつある。冒頭発言の主は上田東一市長の下でこのプロジェクトの陣頭指揮をとった佐々木忍・健康福祉部長(当時、のちに副市長)だが、先月の県議選に出馬(落選)し、今となってはその真意を確かめる術も失われた。「税金の無駄使いは許されない」と口を極めてきた上田ワンマン市政はここに至った顛末(てんまつ)を市民に対し、どう説明するつもりなのかー

 

事の発端は2014年に制定された「改正都市再生特別措置法」にさかのぼる。当市は「コンパクトシティ」を提唱するこの構想で街づくりを目指すことにし、2年後にその青写真となる「立地適正化計画」を全国で3番目(上田市長)に策定した。その中の目玉政策が公益財団法人「総合花巻病院」(同市花城町)の県立花巻厚生病院(同市御田屋町)跡地への移転・新築だった。病院側の老朽化がその理由に挙げられたが、じつは中心市街地の活性化の起爆剤にしようという「行政」主導型の施策だったことが病院関係者の証言でわかっている。病院を軸とした「年間80万人」の交流人口増などの大風呂敷も今やいずこにか消えてしまった。「(医師確保は)至難の業」としながら、強引に立地を進めた理由はこの辺に隠されている。そのほころびが白日の下にさらされたのが、どこかに雲散霧消(うんさんむしょう)してしまった「助産所」事件である。

 

当初の移転整備基本構想案(2015年11月)によると、助産所は2階建て(延べ面積154平方メ−トル)の建物で、一日2人の利用者に対し、産婦人科医や助産師など5人の職員が対応に当たることが明記されていた。ところが、一年後にまとめられた「移転・新築整備基本計画」(2016年12月)ではこの記述がそっくり削除され、こう変更された。「将来的に産婦人科医師や助産師の体制が整った際には出産の受け入れを検討する。それまでは助産師外来を開設し、出産前後の妊婦指導などを行えるようにし、同時に産後ケア施設の開設も検討する」―。ところが、である。その「助産師外来」さえもオ−プン時の開設が困難なことが9月定例会で明らかになったのである。

 

「出産」受難劇はあちこちで起きている。県立中部病院(北上市)の産婦人科の常勤医師5人のうち、東北大学が派遣していた3人について、同大学は来春にも中止する意向を示した。矢巾町に移転した岩手医科大学が応援医師を派遣することで、とりあえず事なきを得たが、花巻市内の二つの産婦人科医院のうちのひとつが助産師の退職を理由に来年3月中旬で閉院することになった。花巻市当局は急きょ、給付金や貸付金など最大で200万円を支給する「助産師等確保支援事業」(10,352千円)を9月定例会に上程するなど“付け焼刃”的な対応に追われた。遠野市などでは医師確保専任の職員を配置するなどの後方支援体制を敷いているが、「(医師確保の)一義的な責任は法人側にある」とする当市の姿勢のツケが今になって回ってきたということである。

 

厚労省は今年2月、医師の充足率を示す指標で、岩手県が全国47都道府県で最下位であることを公表した。この数字が裏付けるように、今年3月末をもって岩手医科大学付属花巻温泉病院が閉院に追い込まれた。追いかけるように先月には県立東和病院が「診療実績が特に少ない」などの理由で、国の再編・統合の対象にリストアップされるなど医療環境の悪化に拍車をかけている。「至難の業」に手を出すことは行政側にとって、最低限の”禁じ手”である。その原理・原則さえ歯牙(しが)にもかけない強権ぶりにはもはや、二の句も告げない。

 

来年3月1日にオ−プン予定の総合花巻病院の診療科目は内科、呼吸器内科、循環器内科など11科目は常勤医師による診療となっているが、外来の脳神経外科、放射線科、泌尿器科など8科目は常勤の兼務か非常勤が担当する。さらに、当初開設が予定されていた皮膚科、眼科、小児科、助産師外来は「医師確保の見通しが立っていない」として、土壇場で開設が見送られる事態となった。この点について、上田市長は「とくに、産前産後の周産期医療を維持するためには産婦人科と小児科の併設が必至」と議会答弁しているが、こんなことは素人でもわかる理屈である。口を開けば「子育て支援の重要性」を繰り返す、その足元で「いのちの尊厳」が脅かされようとしている。わが「イーハトーブ(宮沢賢治の理想郷)」行政の恐るべき正体、ここに見たりという思いである。

 

 

 

(写真は外観がほぼ完成した総合花巻病院=10月2日、花巻市御田屋町で)

 

 

 

 


2019.10.02:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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