断捨離「大作戦」(「本の目利き」三人衆―その3=完)…「シシ」になった男の“変身術”〜あちこちで、“図書館”論争も!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
断捨離「大作戦」(「本の目利き」三人衆―その3=完)…「シシ」になった男の“変身術”〜あちこちで、“図書館”論争も!!??


 

 「国内の山村にして遠野より更に物深き所には又無数の山神山人の伝説あるべし。願わくは之(これ)を語りて平地人を戦慄(せんりつ)せしめよ」―。民俗学の父と言われる柳田国男(1875〜1962年)の代表作のひとつ『遠野物語』(1910=明治43年)の初版序文にはこんな不気味な言葉が置かれ、その一節にこうある。「天神の山には祭りありて獅子踊(ししをどり)あり…獅子踊と云ふは鹿(しか)の舞なり」

 

 『シシになる。―遠野異界探訪記』(2025年6月初版発行、亜紀書房)―。著者は“平地人”の代表選手とも言える若き都会人―東京都内の広告代理店に勤めていた富川岳さん(39)で、己自身が「シシ」に変身するという奇想天外な内容である。2016年に地域活性化プロジェクトのメンバーとして、遠野市に移住。河童や座敷童子、山男・山女、天狗など様々な妖怪と神々が跋扈(ばっこ)する“異界”に突然、投げ出された。

 

 柳田が100年以上も前に「戦慄」したのが、附馬牛(つきもうし)地区に伝わる「張山(はりやま)しし踊り」だった。富川さんがその踊り手になるまでのまさに鬼気迫るばかりの“変身”ぶりについては、とても愚筆の及ぶところではないので、ぜひ手に取ってお読みいただきたい。私はためらわずに現代版『遠野物語』と命名した。こんな美しい響きの言葉に耳目を奪われた。

 

 「遠野巡灯篭木」(トオノメグリトロゲ)―。遠野には初盆から3年間、先祖が迷わずに家に戻れるように盆明けまで、軒先に目印の高い木を立てる風習がある。木の先端には提灯(ちょうちん)と戒名を書いた布がぶら下げられ、「迎灯篭木」(ムカイトロゲ)と呼ばれる。一方、冒頭の「メグリトロゲ」は郷土芸能と現代カルチャーを織り交ぜた「コラボ」演出で、コロナ禍の2021年に初演を迎えた。富川さんはこうした活動のあり方を「Reboot Folklore」(地域文化の再起動)と定義している。

 

 「元祖の柳田本を脚本・演出したのが(宮沢)賢治の物語世界ではなかったのか」―。新旧の『遠野物語』を合わせ読むうちにハタと思い至った。そして、その仲介役こそが賢治とも交流があった語り部の佐々木喜善ではなかったのか。『なめとこ山の熊』や『鹿踊りのはじまり』、『注文の多い料理店』、『虔十公園林』などなどその通底性を挙げれば枚挙にいとまがない。元祖本の第8話に“神隠し”の話として「寒戸の婆(ばば)」が採録されている。こんな内容である。

 

 「(松崎村の)寒戸にいた娘がある日、木の下に草履(ぞうり)を残して消息を絶った。その30年後、親戚たちが集まっているところへ、その娘がすっかり老いさらばえた姿で帰ってきた。事情を尋ねる親戚たちに対し、娘はみんなに逢いたくて帰って来たものの、山に帰らなければならないと言って去って行った。その日は風が強かったので、遠野ではそれ以来、強風の日は『寒戸の婆が帰ってきそうな日だ』といわれたという」(要旨、ウイキペディアより)

 

 一方、賢治の代表作『風の又三郎』は二百十日の9月1日、山の分校に転校してきた「高田三郎」君がわずか10日後、風の強い日に姿を消してしまうという内容である。「あいつはやっぱり、風の神の子どもだ」―。分校の子どもは「寒戸の婆」と同じように、その背後に「神の存在」を見ているのである。物語世界に欠かせないモチーフのひとつであるその「風」がいま、窮地に立たされている。

 

 「駅前か病院跡地か」―で揺れた新花巻図書館の立地場所がとりあえず、JR花巻駅前に決まり、現在設計業務が進められている。「賢治のふるさとならでは…」という触れ込みのデザインにずばり「又三郎シャフト」なるものがある。シャフトとは「動力伝導用の回転部品」のことらしいが、プレゼン資料には「各空間からの換気経路」とあり、どうやら“風”の通り道らしい。だとすれば、これほどまでに貧相な発想はあるまい。「どっどど/どどうど/どどうど/どどう/青いくるみも吹きとばせ…」―。又三郎が歌う、空に吸い込まれそうな清らかな歌声はどこからも聞こえてこない。耳に届くのは無機質な電車の発着音だけである。

 

 『「本の目利き」三人衆―その2』で紹介した村上巨樹さんは2年前、JR花巻駅前に古書店を開業した。そして、「シシになった」富川さんも4月18日、後を追うようにJR遠野駅前に同じ古書店「河童ブックス」をオープンさせる。二人に共通するのは村上さんがギター奏者(ミュージシャン)、富川さんがシシ踊りの踊り手(ダンサー)…つまり、記憶を継承する古書群が「芸術・文化」と背中合わせに同居しているということである。まさに「Reboot Folklore」の担い手として、これ以上の人材は見当たらない。

 

 遠野三山のひとつ、早池峰山の存在がなかったら『遠野物語』が誕生しなかったように、図書館のもうひとつの立地候補地である「病院跡地」からは賢治がこよなく愛したこの霊山がキラキラと輝いて見える。賢治の物語世界(ナラティブ=物語性)を駅前のビル群の中に埋没させてはなるまい。「Reboot」(再起動)をさせるためには一日も早く、“賢治”をここから救出しなくてはならない。

 

 

 

 

 

(写真は本を分別・整理する富川さん。「本に囲まれているだけで、気持ちが高まって…」=4月2日午前、花巻市桜町3丁目の自宅で)

 

 

 

≪追記―1≫〜“風の夕食”

 

 「そりゃ風だって、一日中飛び回っていたんでは腹もすくじゃろうが。“風の夕食”という言葉を覚えておけ」―。ここまで書き及んできて、アイヌの古老(エカシ)が独り言のように漏らしたつぶやきをふと、思い出した。夕方、風が急に吹き止む―「夕凪」(ゆうなぎ)のことをアイヌ語では「レラ(rera=風)・オヌマン(onuman=夕方)・イペ(ipe=食べる)」と表記する。風はまさに「生き物」そのものなのである。

 

 仮に又三郎を“空調”に見立てるようなことがあってはそれこそ、罰(バチ)が当たる。前回(その2)、当ブログに登場した『宮沢賢治殺人事件』(吉田司著)が“正夢”になってしまう。ちなみに、アイヌの世界では「風」のことを「レラカムイ」(風の神)と呼ぶ。これを和訳すれば、さしずめ「又三郎」ということにでもなろうか。

 

 

≪追記―2≫〜又三郎とは実は私のことだった!?

 

 『風の又三郎』が初めて、映画化されたのは私の生年と同じ昭和15(1940)年である。だから又三郎は私の”分身”だとずっと、思い続けてきた。ところで、映画で分教場の最上級生「一郎」役を演じた俳優、声優の大泉滉さん(故人)は前年、同じ作品が築地小劇場で上演された際は主役の「又三郎」役でデビューした。生前、その辺のいきさつを聞いたことがある。それにしても戦雲が漂う中、こうした演劇や映画が誕生したこと自体に驚愕(きょうがく)させられる。

 

 日露の血を引くアナキスト作家、大泉黒石の子として生まれた。祖父はロシア皇帝ニコライ2世の来日時に侍従役だったことで知られる。主役抜擢のきっかけについてはあのとぼけた表情で、こう語った。「まちなかで学生風の男から子役にならんかね、と。混血だから、髪の毛は真っ赤。貧乏だったから、お願いしますって…」。そういえば、賢治は作品の中で又三郎を「赤毛の子ども」と表現し、分教場の子どもたちにも「あいつは外国人だな」と言わせている。「どっどど/どどうど…」。ビールをあおりながら、あたりかまわずに高吟(こうぎん)する大泉さんの姿が懐かしい。

 

 

≪追記ー3≫〜図書館の解体を中断!!??

 

 東京都清瀬市は1日、解体作業が始まっている旧中央図書館の解体工事の中断を決めたと発表した。3月29日に投開票された市長選で大きな争点となったのが、昨年、6館から3館に減った市立図書館をめぐる問題だった。旧中央図書館の解体中止を掲げた、無所属新顔で前市議会副議長の原田博美氏(50)=共産、社民推薦=が、無所属現職の渋谷桂司氏(52)=自民、公明推薦=を破り、初当選した。同市は解体中断を決めた理由について、選挙結果を踏まえ「市民の意向や新たな市政運営方針を総合的に判断した」としている」(2日付「朝日新聞」電子版)

 

 

≪追記ー4≫〜一方では、移転・新築オープンへ

 

 新しい広島市立中央図書館が4月1日午前10時、JR広島駅前に開館する。開館に先立ち、報道陣向けの内覧会があり、明るく開放感のある館内が披露された。新図書館は、広島駅と歩行デッキで結ばれた商業施設「エールエールヒロシマ」の8〜10階にある。中央の吹き抜けやイベントスペースを囲むように、書棚が配置されている。広々とした通路を周回しながら、本探しを楽しめるレイアウトだ。大きな窓から採光する構造にもなっている。

 

 ただ、地上階から図書館フロアに直通するエレベーターはなく、休日の混雑時は館内移動に時間がかかる恐れがある。松井一実市長は「来館者が増えるきっかけになるならば、うれしい悲鳴」としつつ、「利用状況に応じて、問題が生じれば必ず解消する心づもりだ」と話した。図書館専用の駐車場や駐輪場は設けていない(3月29日付「朝日新聞)=(註)広島市立中央図書館をめぐっては、当市と同じように市民の反対運動や公文書の非開示問題などがあり、オープンが大幅に遅れた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 


2026.04.02:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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