孤高の裁判を闘うとは…花巻病院「訴訟」傍聴記〜まるで、“魔女狩り”/袴田「孤高」裁判は無罪に!!!:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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盛岡地方裁判所花巻支部で25日、公益財団法人「総合花巻病院」(大島俊克理事長)を相手取って、「降格処分」の無効などを求めた民事訴訟の証人尋問が行われた。裁判を起こしているのは40代男性技士のAさん。訴状によると、Aさんは2020(令和2)年2月1日付で、移転・新築前の同病院に臨床工学室技士長として採用されたが、2023(令和5)年2月1日付で、技士長から「主任級」に降格された。提訴は同年5月30日付で、精神的な苦痛などに対する慰謝料を含め、総額1,160万円の賠償を求めている。
「言葉使いが威圧的」「自己顕示欲が強い」「職場風土を乱す」…。この日、被告の病院側は専務理事ら3人を証人に立てたが、Aさんへの“人格攻撃”(人身御供=ひとみごくう)に終始した。被告側の陳述書に記載された看護師らへの誹謗中傷について、平古場郁弥裁判長は「その経緯を記録した議事録など証拠品は存在するのか」と何度もしつこく質したが、「その種の記録はない」と答えるにとどまった。さらに、処分後に提出された始末書について、Aさんは「これではダメだ。言われたとおりに書き直せと要求された。逆らったら、処分が重くなると思った。今後、このようなことをしないことを決意します、と末尾に書くよう強要された」と証言した。
また、Aさんが不在中、臨床工学室の自室に病院幹部が立ち入った写真が証拠として提出された。これについて、「置いたものが不自然に動いている感じがしたので、気持ち悪くなってカメラを設置した。私に不利になる証拠を探しているのではないかと思った」とAさんが証言したのに対し、被告側は「業務の必要上、中に入った」と反論した。双方の尋問の中で注目されたのは米国の心理学者が提唱した「心理的安全性」についてのやり取り。この学者はこの言葉について、「職員同士が職位に関係なく健全な意見を戦わせ、生産的で良い仕事をすることに力を集中させる組織風土」と定義しており、Aさんはある会議でこの必要性を提言した。ところが、被告側は「短絡的な組織批判だ」として、提言の書き直しを命じたことも明らかになった。
口裏を合わせたような被告側の証言を聞きながら、私は中世末期から近世にかけてヨーロッパで行われた、異端者を排除する”魔女狩り”(魔女裁判)の光景を重ね合わせていた。傍聴者は私を入れて、2人だけだった。この日の尋問は約4時間に及んだが、11月29日までに双方の弁護人が最終書面を提出し、12月29日の口頭弁論で結審となる。
【裁判をめぐる経緯】(7月1日付当ブログ参照)
「総合花巻病院は、経営もひどいですが、パワハラも日常的に行われています。花巻市民の税金によって助けられた病院の将来はどうなるのでしょうか。私はいまこの病院で勤務しながら、病院相手に訴訟中です」―。今年4月下旬、こんな文面のメールが突然、ブログのコメント欄に送られてきた。実名を名乗っていたが、記憶に覚えはなかった。この1カ月ほど前の3月22日、花巻市議会の臨時会が開かれ、同病院に対する総額5億円の財政支援が決まっていた。私は末尾の「訴訟」という二文字が気になった。さっそく、メールでやりとりをし、翌日、花巻駅前の居酒屋で落ち合った。
「職場改善の提言をしただけで処分を受けた上、始末書も書かされた。地獄のような職場だった」―。40代半ばのその男性技士はまるで、ダムが決壊したかのように一気に話し始めた。降格処分に伴う慰謝料請求の裁判を起こしたのは実は1年ほど前の令和5年5月のことだと分かった。孤立無援の裁判闘争の中で、心身ともにすり減らしてきた様子が手に取るように伝わってきた。「精神的に追い込まれ、もうだめかと思ったこともあった」と言って、絞り出すようにつぶやいた。「ある時、クリーニングをしたばかりの白衣のポケットに虫の死骸が入っていた。かと思ったら、今度は泥みたいなものを塗られたり。嫌がらせにしても…」
総合花巻病院は2020(令和2)年3月2日、現在地〈市内御田屋町〉に移転・新築した。総工費86億9千万円のうち、市側の補助金は19億7500万円で、病院側の自己資金はわずかに1億円。私は当初から行政主導型の強引とも思えるこの構想には警鐘を鳴らし続けていた。そして、今回の追加の財政支援。オープンからわずか4年余りでの“経営破綻”だった。医師不足を棚に上げたままの“見切り発車”は当然、医療現場の荒廃を招いていた。私はその都度、この病院の舞台裏に目を光らせ、ブログ上で批判を続けてきた。
「アクセスにアクセスを繰り返すうちにやっと、あなたのブログにたどり着いた。あの時は本当に藁(わら)をもつかみたい気持ちだった」―。彼の「万が一」を心配し、私はできるだけ連絡を取るように心掛けた。「それまで親しかった同僚が突然、くるりと背中を向けたり…」―。“四面楚歌”や“衆人環視”による敵意の壁の恐ろしさを私自身、肌身で知っていた。自慢にもならないが、“一匹狼”だった己の体験がこんな時に少しでも役立つとは…
一方で、ハッとする言葉にこっちが救われることも。たとえばある時突然、彼はこう言った。「『夜と霧』をしっかりと読み直しました」。第2次世界大戦中、ナチスの強制収容所に収監された人たちの拘禁心理を描いたヴィクトール・フランクルの代表作(1946年)である。こんな本まで手に取っていたのか…。悩みを打ち明けた直後には、気持ちを取り直すようなかのようにオクターブを上げた。「今日も花巻の皆さんのために、一隅(ぐう)の光になります」とー。「一隅を照らす」という最澄のメッセージに自分を仮託する姿を見ながら、私は少しずつ安堵(あんど)を覚えるようになった。そして、この日を迎えた。
(写真は法廷への案内表示=花巻市花城町で)
《追記》〜袴田さん、無罪…現代版“魔女狩り”の闇が白日の下に!!!
強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判をやり直す再審公判で、静岡地裁(岡井恒志裁判長)は26日、無罪を言い渡した。新聞に踊る大見出しは袴田さんが背負い続けた「無実の罪」(えん罪)の底知れない闇の深さを暴き出している(9月27日付「朝日新聞」より)
●58年、やっと「自由の扉」/裁判長が謝罪、姉「巌の半生、生かして」
●衣類・自白など捏造認定/死刑再審、戦後5件目
●「三つの捏造」捜査断罪/「自白を強要、非人道的」
●取り返せない司法の過ち