「イ−ハト−ブはなまき」の不気味な沈黙…宮古市がウクライナ難民の受け入れ表明!?:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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「イ−ハト−ブはなまき」の不気味な沈黙…宮古市がウクライナ難民の受け入れ表明!?


 

 原発が砲撃対象になるなどウクライナ危機が緊迫化する中、花巻市議会3月定例会の予算特別委員会が9日から3日間の日程で始まった。まちづくりや医療、福祉、教育、コロナ対策…市民の「安心・安全」を審議する議会中継が流れる中、かたわらのテレビはウクライナ難民がすでに200万人を超えたというニュ−スを流していた。この光景の隔たりに一瞬、たじろいだ。市民生活に直結する予算審議が最大の優先課題であることは言を待たない。私が戸惑いを感じたのは「イ−ハト−ブはなまき」の実現を掲げる「上田(東一)」市政が海の向こうの悲劇に“無言の行”を続ける、その不気味さに対してである。

 

 今回の非常事態に対する国内の地方議会や地方自治体の反応は早かった。当花巻市議会はいち早く3月4日開催の本会議で「ウクライナへのロシアの軍事侵攻に断固反対する」―決議を全会一致で可決。その際、宮沢賢治が理想郷と名づけた「イ−ハト−ブ」からのメッセ−ジ性の重要性が指摘された。たとえば、賢治は『農民芸術概論綱要』の中で「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」と訴え、さらに人口に膾炙(かいしゃ)している詩「雨ニモマケズ」の中では、苦難に寄り添う姿を直截(ちょくせつ)に「行ッテ」と表現していることなど「賢治の地」ならではの議論が交わされた。

 

 一方、近隣では同じ日、平成18年に「非核平和都市」宣言をした遠野市が「一刻も早いロシア軍の撤退、及び各国政府の外交努力による平和的解決が実現することを強く求める」という市長メッセ−ジを発信し、多田一彦市長自らが「こんな時こそ、日本の米をウクライナや周辺支援国へ」と呼びかけた。当然のことながら、被爆地は即応した。広島市の松井一実市長と長崎市の田上富久市長は2月28日、プ−チン大統領宛ての連名の抗議文をロシア大使館に送付し、こう訴えた。「『二度と同じ体験をさせてはならない』と懸命に訴えてきた被爆者の思いを踏みにじるもので、憤りを感じる。広島、長崎に続く第三の戦争被爆地を生んではならない」―

 

 今年5月、復帰50年を迎える沖縄県では一段と大きな抗議の声が挙がった。かつて、アフガン戦争やイラク戦争の出撃拠点となった米軍基地の7割以上がこの狭い沖縄の地に集中している。「辺野古」新基地建設に揺れる地元名護市議会は3日開催の3月定例会で、ロシアの軍事侵攻の犠牲になったウクライナの人たちに全員で黙とうを捧げたあと、決議文と意見書を同時に可決し、プ−チン大統領と駐日ロシア大使、岸田首相などに送付した。両案はこう訴えた。「一切の戦争を否定し、日本国憲法の恒久平和の理念に基づき、戦争に反対することを宣言する。さらに日本政府に対し、ウクライナ在留邦人の安全確保に尽くすことや国際社会と連携し、制裁措置を含む迅速で厳格な対応を行うことも求める」

 

 一方、全国で唯一固有名詞を冠した「賢治まちづくり課」を設置する当市は、将来都市像として「市民パワ−をひとつに歴史と文化で拓く笑顔の花咲く温(あった)か都市(まち)イ−ハト−ブはなまき」―を掲げ、「イ−ハト−ブはなまき」の実現を目指している。しかし今のところ、首長による「メッセ−ジ」発信など他自治体のような主体的な動きはなく、日本赤十字社が募る「ウクライナ人道危機救援金」の受付窓口を庁内に設けた程度である。

 

 これに関連し、高橋修議員(市民クラブ)がこの日の審議で「非核平和都市宣言をしている当市のトップとして、今回の事態をどう認識しているか」と問うた。これに対し、上田市長は「日本のマスコミは軍事侵攻という表現を使っているが、私は明らかに『侵略』だと認識しており、強い怒りを覚えている。募金の窓口を設けるなど難民支援に力を入れたい」と明言したが、具体的なメッセ−ジの発信などへの言及はなかった。今後の対応に注目したい。イーハトーブの盟主として、今回の「侵略」発言をぜひとも内外に発信してほしいと切に願いたい。

 

 当市の財政を底支えする「イ−ハト−ブ応援寄付金」(ふるさと納税)が1月末現在で41億円に達し、過去最高を記録した。その多くが返礼品の「牛タン」が占めている。賢治は動物を撲殺(ぼくさつ)する悲しみについて、「一体この物語は、あんまり哀れ過ぎるのだ」と書いている(『フランドン農学校の豚』=2月25日付当ブログ参照)。ことさらに「賢治精神」を言い募るつもりはないが、このチグハグな“音なしの構え”にはやはり、言い知れない不気味さを感じざるを得ない。 

 

 予算委最終日の11日は「東日本大震災」から11年の節目を迎える。福島原発の廃炉の見通しが見えないまま、ロシアによる「原発」攻撃という狂気がまかり通っている。ちなみに本日10日はアメリカ軍による無差別攻撃で、10万人以上の無辜(むこ)の市民が犠牲になった「東京大空襲」から丸77年…ふたたび、「ホロコースト」(大虐殺)の悪夢が!!??

 

 

 

 

《追記ー1》〜当初予算案に8年ぶりに反対論

 

 花巻市議会3月定例会の予算特別委員会で10日、櫻井肇議員(日本共産党花巻市議団)が令和4年度当初予算案に反対する討論を行い、同市議団の3人が採決で否決の意思表示をした。櫻井議員は「個別の政策では評価すべき点も多いが、(上田市長の)政治姿勢にはなお、問題がある」とした。当初予算案に反対論が出されたのは8年ぶり。

 

 

《追記ー2》〜宮古市がウクライナ難民の受け入れを表明

 

 宮古市の山本正徳市長は10日、着のみ着のままで祖国を追われたウクライナ難民を受け入れる方針を記者会見で明らかにした。ロシアの軍事侵攻で国外に逃れる難民は増え続け、同日現在で215万人を超えた。「明日で震災11年。逃げ惑う難民の姿があの大震災の光景と重なる。ホテルや災害公営住宅などを開放したい」と山本市長。阪神淡路大震災の際、花巻市の旧東和町が「被災者受け入れ条例」を制定したが、国外からの受け入れは初めて。

 

 

《追記ー3》〜災害公営住宅の「天国」と「地獄」と

 

 此方の我がイーハトーブ首長、上田東一市長が災害公営住宅に入居する被災者に共益費の一部を肩代わりさせていた(3月1日付当ブログ「相変わらずの”上から目線”と”責任転嫁”」参照)ーと思ったら、彼方の被災地宮古の首長、山本正徳市長は同じその住宅をウクライナ難民に開放するのだという。まさに、天国と地獄…もう、卒倒するしかないない。テレビのアナウンサーがプーチンを称して「聞く耳を持たない”裸の王様”」と話している。あれっ、同じような人物が足元にも!?

 

 

 

 

 

(写真は予算審議に出席した課長級以上の市職員=3月9日、花巻市市議会議場で。インタ−ネットの議会中継の画面から)

 

 

 

 

 


2022.03.09:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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