「誰ひとり取り残さない政治を」…必見!?映画「ボストン市庁舎」:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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「市民のための行政はどうあるべきか。そして民主主義とは…」―。当花巻市の次期市長選挙の告示を1か月後に控えたいま、そのあるべき理想の姿をえぐり取ったようなドキュメンタリ−映画「ボストン市庁舎」が静かなブ−ムを引き起こしている。監督は「ニュ−ヨ−ク公共図書館」(2019年10月8日付当ブログ参照)を手がけた91歳の巨匠フレデリック・ワイズマン監督。米ボストン市役所で繰り広げられる人間模様を記録した4時間半に及ぶ大作で、先月中旬に全国公開された。県内(盛岡)での上映は新市長誕生直後の来年1月28日。“ボストンの奇跡”を、「イ−ハト−ブ」(賢治の理想郷)でも…
「誰ひとり取り残さない!優しさを後回しにしない!」―。前花巻市議会議長の新人候補、小原雅道氏(61)を紹介するリ−フレットにこんなフレ−ズがある。映画の予告編を見ただけでもこのフレ−ズをそのまま実行に移したような場面が随所に出てくる。たとえば、駐車違反をめぐる市民と市職員とのやりとり。夜遅くに出産した市民はやむなく、駐車違反を起こしてしまう。事情を知った市職員は自分の判断でそれを許す。このシ−ンについて、ワイズマン監督はこう語っている。「『あなたは停めてはいけないところに停めましたね。はい、違反です』と機械的に判断するのではなくて、1人1人の市民の声に耳を傾けて、それに柔軟に対応していくというのは、民主主義において必要なことだと思う」
貧困世帯へのフ−ドバンクや同性カップルの結婚式、NAACP(全米黒人地位向上協会)との話し合いや看護師の支援、さらには野良犬のクレ−ムに至るまで次々と寄せられる市民からの電話への対応…。大麻を扱う店の出店をめぐって、店のオ−ナ−と地域住民が激論を交わす場面などまちの表情が丁寧にすくい取られる。我が首長である上田東一市長との気の遠くなるような隔たりのせいなのか、マ−ティン・ウォルシュ市長(当時)の言葉がずしりと心に響いてくる。「もし困ったことが発生したら、市長の私に電話を。通りで私を見かけたら声をかけて」―。そこには、「誰一人取り残さない政治をしたい」という市長らの真摯な姿を見ることができる。
ウォルシュ市長は就任時、アフリカ系アメリカ人やヒスパニックなど、様々な人種の人々を市の重要なポジションに任命した。それを自ら「レインボ−連立政権」と名づけ、多様性の大切さを市政運営のスロ−ガンに掲げた。”レインボ−"(虹)の意義についてのワイズマン監督の言葉が印象的である。「この映画は民主主義が機能している姿を描いていると思う。人々が集まり、あらゆる議論をし、時には妥協して前進するということがボストン市庁舎では行われている。彼らは相手を軽蔑するのではなく、敬意を持って接しようとしている。行政がちゃんと市民のニ−ズに応えていて、自分たちがやっていることに責任を持っている」
「優しさって、なんだろう。それは宮沢賢治さんの『雨ニモマケズ』にある、たくさんのことを見て、たくさんの声を聴いて、お互いに理解し合い、考えて行動する。それが私の考える優しさです。子どもたちには『夢』を、若者には『希望』を、お年寄りには『安心』を…」―。小原氏が掲げるスロ−ガンはボストン市の「レインボ−」理念そのものである。
「人権無視」の“パワハラ”疑惑がうごめく現市政の継続か、はたまた「ボストンからイ−ハト−ブ」への変革の一里塚か―。その重大な選択の日はあと1か月余り後に迫っている。警察、消防、保健衛生、住宅、雇用、交通、結婚、死亡……など住民の日常生活に直結する幅広い部署で縦横無尽に動き回るボストン市の職員たちの姿を見ていると、「お役所仕事」などというイメ−ジは一掃されてしまう。わが「イ−ハト−ブ」にそんな日が到来するのはもう、夢ではない。
(写真は映画「ボストン市庁舎」のひとこま。市職員は障がいを持つ人たちと楽しそうにダンスに興じていた=予告編の画面から)