「Mr.PO」の思想と行動(2)…「立地適正化計画」という“自縄自縛“:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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「Mr.PO」の思想と行動(2)…「立地適正化計画」という“自縄自縛“
2021.05.28:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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「すいた時間、すいた場所を選んで遊ぼう」―。人っ子ひとりいない公園広場にこんなステッカ−が張り付けてある。コロナ禍が猛威を振るう半年以上も前の令和元年(2019年)夏、花巻市内の中心市街地に忽然と「花巻中央広場」なる空間が姿を見せた。陽をさえぎる樹木もなく、冬場は雪に閉ざされるこの空間には当時から人の気配はなかった。とってつけたようなボルダリング(岩や人口壁面への登はん用施設)に取りついている人の姿はついぞ、見かけたことはない。実はこの“無用の長物”こそが、Mr.PO(上田東一市長)が政策理念に掲げる「立地適正化計画」の虚実を見事なまでに映し出している。
少子高齢化の時代のただ中に誕生した上田市政はある意味で時の運にも恵まれていた。初当選した直後の平成26(2014)年8月、「改正都市再生特別措置法」が施行されたのに伴い、国の優遇制度が利用できる「立地適正化計画」の制度が導入された。「まちづくりと施設整備の方向―立地適正化計画による都市再構築の方針」(以下「都市再構築の方針」)…いまに至る政策理念の骨子が固められたのはそのわずか4ケ月後。まちづくりの方向性がこの時点で以下のように位置付けられた。
「立地適正化計画は、それぞれの市町村において都市計画法に基づいて指定された都市計画区域内において、さらに住宅及び医療、福祉、商業その他居住に関連する施設の立地に関する方向を定めるとともに、用途地域など既存の都市計画制度と組み合わせて居住の密度を高めていく『居住誘導区域』と、その居住誘導区域の中でも特にまち全体として必要な機能の維持と新規立地を促す『都市機能誘導区域』を定め、市街地の範囲や都市機能の立地をコントロールしながら、人口減少社会に耐えうる住みよいまちづくりの形成に努めていこうとするものです」―。全国自治体が競うように計画策定を進める中、当市は2年後の平成28(2016)年6月、全国で「3番目」の策定にこぎつけた。Mr.POが政策論争のたびに自慢げに口にする常とう句である。
このプロジェクトの第1号が昨年3月、旧厚生病院跡地に移転・新築した総合花巻病院である。中心市街地の定住促進と活性化を目指した災害公営住宅や子育て世代向け住宅などの建設が続き、立地適正化計画は順風満帆に進むかと思われたが、その足を引っ張ることになったのが、冒頭の“無人公園”の怪である。元デパ―ト跡地だった当該地はがけ崩れの恐れのある急斜面に面しており、「都市計画運用指針」(国交省)で土砂災害特別警戒区域(いわゆる「レッドゾ−ン」)に指定されていた。「こともあろうに、人命の危険が及びかねない場所に居住を促す」―。Mr.POの本性見たりである。こういう心性を称して、広い意味では「ファシズム」ともいう。
オ―プン前年の平成30(2018)年10月、国交省から除外指導があり、さらに令和2(2020)年6月には都市再生特別措置法の一部改正が国会で可決成立。「居住誘導区域から土砂災害特別警戒区域を原則すべて除外する」―ことが正式に決まった。「中央広場」誕生の裏には決して、表ざたにはできないこんな闇の出自が隠されていたのである。時折開かれる官製お抱えの“やらせイベント”以外にはほとんど人気(ひとけ&にんき)のない広場に立っていると、人命軽視という怨霊(おんりょう)がそこら中に漂っているような錯覚にさえ陥ってしまう。慌ててしつらえた崩落防止用のコンクリ―ト壁(冒頭写真)を見ていると、なおさらそんな気持ちになってしまう。
商社勤務の経験もあり、確かに「商才」には長けているのだろうが、「文才」となると若干、首を傾げたくなる。私は議員在職中、何度か「(宮沢)賢治」観を問うたことがある。そのたびに賢治作品を「道徳本」としてみる浅慮(せんりょ)にびっくりしたものである。つまりはその読解力のなささ加減、想像力の欠如に失望させられたというのが実感である。たとえば、「住宅付き図書館」の駅前立地という“奇想天外”にその精神の貧困の一端を垣間見ることができる(5月24日付当ブログ参照)
前市政が平成25年5月、新図書館の建設に当たっての適正蔵書数を「50〜65万冊」と算定したのに対し、その後に就任したMr.POは半分の30万冊に見直す考えを示し、その理由をこう述べた。「人口減少が見込まれる中で利用者が蔵書数の増加ほどに増えるとは考えにくく、一層厳しさを増すと見込まれる財政状況を踏まえ、運営経費や従事者数が現状を大きく超えないよう計画の規模を見直す必要があります。蔵書数は県内他市の市立図書館と比較して突出して多いものでしたが、30万冊は花巻市の都市規模にもほぼ見合うものと考えられます」(前掲「都市再構築の方針)―。いわゆる“身の丈”発言である。
「知の殿堂」とも呼ばれる図書館をおのれの貧相な身の丈で斟酌(しんしゃく)してもらっては迷惑千万である。ちなみに前市政時代の計画で見込まれた所蔵雑誌数は約400誌にのぼったが、現在公表されている「新花巻図書館整備基本計画(試案)」の中では半分の約200誌に減っている。
「新しい風は、市政の風通しをよくしたいということです。すなわち市民への情報提供に努める。そして市民の皆様、市議会及び議員の皆様の声をよく聞く。それから、昨日も申し上げましたけれども、市政の決定過程の透明性を高める。どうしてそのような市政を行ったのかがきちんと説明できるように。市長が決めたということではなく、市長がなぜ決めたかということをしっかり残すことが大事だと。そのようなイメ−ジを持っております。それで、市民と一緒に花巻市をよくしていこうと、そういう風を吹かせたいということでございます」―。Mr.POが初登壇した3月定例会(平成26年3月5日)の一般質問で、私は政治理念と政治哲学についてただした。7年前のこの“初心”は一体、どこに!?これって、ある種の“サギ行為”ではないのか―
(写真は“公園”もどきに姿を変えた「花巻中央広場」。左手の突起部分がボルダリングスペ−ス。後方上部の日本家屋が解体が決まっている旧料亭「まん福」=花巻市吹張町で)
《追記》〜またぞろ、“やらせ”要請の波!?
革新を標榜する某市議が先導役を務めるJR花巻駅の橋上化をめぐる”やらせ”要請がいったん小休止していたと思っていたら、6月1日に3団体がそろってMr.POに対して促進方を要請することがわかった(5月7日、同11日、同16日付の当ブログ参照)。花巻農業高校同窓会と市商店街振興組合協議会、花巻北高同窓会・PTAの3団体で、そういえば、橋上化問題も立地適正化計画の一大プロジェクトのひとつ。どっちが“やらせ”の当事者か、わかったもんではない。