ザ・エンド……We Are the World:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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ザ・エンド……We Are the World


 

 今月末、亡き妻の3回忌(没後2年)を迎える。2年前の7月29日、市議引退後の改選市議選投開票日のその日の未明、肺がんを患っていた妻はベッドから転げ落ちるようにして死んでいた。享年75歳。平成から令和へ…この間、時はあっという間に過ぎ去った。そして、満80歳の老残をねらい撃ちするかのように今度は「コロナパンデミック」が襲いかかった。肺に病を抱えていた妻がこの災厄に遭遇せずに旅立ったのはある意味、幸運だったのかもしれない。ここ数カ月間、コロナ禍に翻弄(ほんろう)される姿を恥ずかしげもなくさらけ出してきた。汗顔(かんがん)の至りである。

 

 「咳(せき)をしても一人」―。自由律俳人の尾崎放哉は果てのない“孤独”をこう表現した。最近はその咳ひとつさえ、憚(はばから)れるご時世である。目の先に広がるのは“孤絶”の風景なのか。西行や芭蕉を気取りながら、老い先短い人生をもう少し徘徊してみたいという気持ちになった。「月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり」―。こんな境地に少しでも近づければという思いである。この道行きの背中を押したのもどうも「コロナ神」の差し金のような気がしてならない。芭蕉が「そぞろ神」にそそのかされて、”奥の細道”(みちのく)をさまよい歩いたように…

 

 公開してきたブログは今回をもって閉じ、今後は日記風のメモ書きを原則、非公開の形で書き連ねていきたいと思う。長い間のお付き合いに心からの感謝を申し上げます。皆さまの幸せを祈りつつ……

 

 

 

 

 「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして旅を栖(すみか)とす。古人も多く旅に死せるあり。予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへ、去年(こぞ)の秋江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、やゝ年も暮、春立る霞の空に白川の関こえんと、そゞろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて、取もの手につかず。もゝ引の破をつゞり、笠の緒付かえて、三里に灸するより、松嶋の月先心にかゝりて、住る方は人に譲り…」(松尾芭蕉『奥の細道』原文冒頭、以下に現代語訳)

 

 

 

 「月日は百代という長い時間を旅していく旅人のようなものであり、その過ぎ去って行く一年一年もまた旅人なのだ。船頭のように舟の上に生涯を浮かべ、馬子のように馬の轡(くつわ)を引いて老いていく者は日々旅の中にいるのであり、旅を住まいとするのだ。西行、能因など、昔も旅の途上で亡くなった人は多い」

 

 「私もいくつの頃だったか、吹き流れていくちぎれ雲に誘われ漂泊の旅への思いを止めることができず、海ぎわの地をさすらい、去年の秋は川のほとりのあばら家に戻りその蜘蛛の古巣をはらい一旦落ち着いていたのだが、しだいに年も暮れ春になり、霞のかかった空をながめていると、ふと「白河の関」を越してみたくなり、わけもなく人をそわそわさせるという「そぞろ神」に憑かれたように心がさわぎ、「道祖神」の手招きにあって何も手につかない有様となり、股引の破れを繕い、笠の緒をつけかえ、三里のつぼに灸をすえるそばから、松島の月がまず心にかかり、住み馴れた深川の庵は人に譲り…」

 

 

 

《追記》〜We Are the World

 

 

 ブログを閉じて以来、毎日のようにマイケル・ジャクソンやティナ・ターナー、ダイアナ・ロス、ボブ・ディラン、レイ・チャールス、スティーヴィー・ワンダー、ポール・サイモンなど著名なアーティストが歌い上げた「We Are the World」(1985年)を大音量で聴いている。コロナ禍のいまこそ「世界はひとつ」のメッセージが必要な時なのだが、アフリカの飢餓救済に立ち上がった、あのなつかしいキャンペーンソングが耳元に届くことはもうないのかも知れない。米国で再レコーディング化の動きもあるが、「三密」がご法度のいま、総勢45人にのぼる大合唱の実現は夢のまた夢か。

 

 

 

 

 


2020.07.12:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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