コロナ禍を映し出す俳句と短歌…それは“マスク騒動“から始まった:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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世相を浮き彫りにする表現方法としては俳句と短歌が最も手っ取り早い。背後にその時々の深層心理を凝縮した言葉が踊っている。毎週日曜朝刊の「朝日俳壇・歌壇」に掲載される言の葉を追いかけてみると(6月19日付「朝日新聞」から)―
<初投句は2月16日。それは“マスク騒動”から>
●旅人の如(ごと)くマスクを探しけり
●薬局のマスクの棚の空白に薄き不安が積もりてゆけり
<人々の表現や視線は次第にとげとげしく>
●マスクして徒(ただ)ならぬ世に出てゆけり
●咳(せき)をしたら人目
●咳をする静まり返るバスの中「花粉症です」被告のごとし
<春の光景も一変>
●桜咲く生徒不在の校庭に
●ひゅんひゅんと客無き土俵に響きいる弓の鋭く空(くう)を切る音
<3月29日、タレントの志村けんさんが死去>
●「エイプリルフ−ル」と笑え志村けん
●最後までコントか本当か分からない手品のように消えたおじさん
<5月13日、力士の勝武士も犠牲に>
●両国の新樹の空に戻らざる
<4月7日、7都道府県に緊急事態宣言。16日には全国に拡大>
●働き方改革コロナウイルスでダブルパンチ受く非正規の子
●動画にはソファ−に寛(くつろ)ぐ首相あり格差社会の現実ここに
●約束のマスク届かぬ杉菜かな
<外出自粛と「3密」の中で>
●初孫に会えぬ三月四月かな
●時疫(ときのえ)に心ならずも春ごもり
●衣更へて自粛うんざりしてゐたり
●ぼくはもう大きくなっちゃうよ東京のパパはじしゅくで帰ってこない
●人を避け人に避けられ雑踏の街をマスクとマスクの孤独
●ひからかさその距離保ち遠会釈
<病院や施設でも面会謝絶>
●面会の出来ぬコロナ禍病室の夫仰ぎ見る傘横向けて
●痩せ細り母が母ではないような哀しい写真施設より届く
<夏の甲子園大会が中止へ>
●今日もまたどこへも行かず蝶の昼
●待つことのいつか祈りへ桐の花
●ホ−ムランまぼろしと消え雲の峰
<戦時中を思い出す句も>
●戦時中千人針縫う女らの祈り同じくマスク縫う今
<一方で、ユ−モアをにじませる句も>
●コロナなど一呑(ひとの)みして鯉幟(こいのぼり)
●憂鬱のただなか燕来てゐたり
●「粛」の字に「すすむ」の意あり四月尽(しがつじん=季語)
●不自由を楽しむ自由風炉手前
●コロナごと麦飯を食ふよく眠る
●パソコンの前の飲み会「おいしいよこれ食べてみて」と言えないのがな
●「いってきます」いつもの通り居間を出し夫は七歩で<職場>に入る
※
緊急事態宣言が解除されて1カ月以上たったいまもコロナ関連の投句はあとを絶たない。たとえば、その後の紙面(6月28日付)にはこんな句が―
●夕刊の全八ペ−ジに散在すコロナという語彙三十八個
●「ステイホ−ム」できずに避難した人十六万人いた原発禍
●友達に鉛筆貸すなと指導する若き教師の胸中想う
●差し出した手の平スル−しトレ−へと置かれた釣り銭無言で拾う
●すずちゃんはき数で私はぐう数で分さん登校まだ会えません
●届いてもしないだろうなアベノマスク議員のだれもしてないぢやないか
(写真は7人家族のサザエさん一家のマスク姿。こうやって、アベノマスク2枚を共用しました=インタ−ネット上に公開の写真から)