『宝島』、沖縄で異例の売れ行き…ある予感:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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米軍占領下の沖縄でもがきながら生きる若者たちの姿を描き、直木賞を受賞した真藤順丈さん(41)の小説「宝島」(講談社)が沖縄県内で反響を呼んでいる。受賞発表翌日の17日、各書店では売り切れが続出。那覇市内の書店スタッフは「直木賞受賞作と言っても、これだけ反響があるのはめったにない。異例だ」と驚き、「沖縄の歴史や今も続く基地問題について考える一冊」と称賛する。
物語は、米軍基地から物資を盗む「戦果アギヤ−」と呼ばれた若者たちを描く。沖縄の言葉をふんだんに盛り込み、沖縄の戦後史に切り込んだ意欲作だ。那覇市久茂地のリブロリウボウブックセンタ−店では、直木賞が発表された16日夜、閉店間際に本を求めて数人が駆け込んだ。17日も朝から売れ続け、用意した40冊は午後3時ごろに完売した。
ライタ−の友寄貞丸さん(58)=那覇市=は、知人から東京で売り切れているので手に入れてほしいと連絡があり急いで購入。「沖縄の戦後史を本土の作家がどう捉えて小説にしたのか興味がある」と笑みを浮かべた。店頭に並ぶ最後の2冊を購入したのは那覇市の60代の夫婦。「小説の舞台が沖縄なので読みたくなった。復帰前の私たちは高校生。主人公の思いが重なるかもしれない」と話した。
同店スタッフの宮里ゆり子さん(37)は「表現力がすごくて、読んでいると頭に映像が浮かんでくる」と絶賛した。「主人公が今の沖縄で生きているなら、基地にどう向き合っていただろうかと考える。基地がある沖縄の歴史や今も続く問題を考える一冊だと思う」。16日夜にブ−スを設けた同市牧志のジュンク堂那覇店では、17日正午すぎに50冊が完売。200冊を追加発注した。森本浩平店長(44)は「圧倒的なクオリティ−。きょうは年配の方が多く購入していたが、若い人たちにも手にとってほしい本」と太鼓判を押した。
午前中で22冊が売り切れた同市おもろまちの球陽堂書房メインプレイス店では、すでに20冊以上の予約を受け付けた。新里哲彦店長(61)は「小学校への戦闘機墜落、交通死亡事故の無罪判決、コザ騒動など、主人公を通して沖縄の痛みが理解できる。多くの人に読んでほしい」と願った。
【ことば】戦果アギヤ− 戦後の沖縄で、米軍の倉庫から豊富な物資を盗み出すことを得意とした人のこと。食うや食わずの住民生活に比べて米軍物資はあり余るほど豊かで、生きていくためのぎりぎりの手段でもあった(1月18日付「沖縄タイムス」)
(写真は売り切れの張り紙を出した書店=1月17日午後、那覇市内のジュンク堂書店那覇店で、「沖縄タイムス」より)
《追記》〜ある予感
「沖縄の米軍基地から物資を盗み出す“戦果アギャ−”は年端もいかない少年少女たち。『生還こそがいちばんの戦果』と言っていたリ−ダ−がある夜突然消えた。圧倒的熱量!!聴け、沖縄の歌を」(1月19日付「朝日新聞」)―。第160回直木賞と第9回山田風太郎賞の2冠を達成した真藤順丈さんの『宝島』を宣伝する新聞広告にある予感を感じた。「沖縄」問題に“知らぬが仏”を決め込んできた本土(ヤマト)側に、この本はなにか別の風を吹かせるのではないか―そんな予感を。その一方で「逆もまた真なり」という不吉な予感も…