沖縄からの訴え…イ−ハト−ブからニライカナイへ:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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沖縄からの訴え…イ−ハト−ブからニライカナイへ


 “ヒロジ節”は生(なま)で聞くに限る―。24,25の両日、北上市と盛岡市で開かれた講演会「沖縄の基地の実態と平和を願うわけ―辺野古・高江の新基地に非暴力で抗う」(「沖縄とつながる岩手の会」など主催)は会場を埋めた人たちの熱気に包まれていた。基地反対運動の最前線に立つ沖縄平和運動センタ−議長の山城博治さん(65)は講演の途中でふ〜っと息をつき、こう話した。「東日本大震災の復興は道半ば。福島の原発事故で沖縄に避難してきた被災者の方も多い。こんな時に沖縄のことだけを訴えてもいいものか。不遜ではないか…」。このひと言に私は胸を突かれた。いつもそうなのだ。沖縄の苦難を語りながら、絶えずもうひとつの苦難にまなざしを向ける。この全(まった)き人間性が私たちを引き付けるのである。

 

 最初に出会ったのは昨年10月15日、オスプレイが離着陸する沖縄県東村高江のヘリパット建設現場―。“現場隊長”でもある山城さんは土砂降りの雨の中でマイクを握っていた。「何かひと言」と促された。隊長がかざしてくれた傘の下で、私は宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」の一節を口にしながら、連帯の気持ちを伝えた。隊長の目が少し、うるんでいるように見えた。山城さんが微罪で不当逮捕されたのはその2日後の17日のことである。155日間の長期勾留の末、今年3月18日に保釈された。その後4月末、沖縄県・石垣島で上映された映画「標的の島―風(かじ)かたか」(三上智恵監督)でのト−クでも話を聞く機会に恵まれた。そして、今回は3度目…唄あり、ジェスチャ−あり。ユ−モアたっぷりの話しっぷりにはさらに磨きがかかっていた。

 

 「つたない英語で基地内の米兵に話しかけると、中には涙をためる兵士もいる。海兵隊の最前線に派遣されるのは米国でも最下層の人たち。だから、心の中では沖縄の現状に理解を示すのかもしれない。いっそのこと、みんなで英語をしっかり勉強し、基地の外と内との連帯運動を盛り上げようか、と」、「本土からやってくる機動隊員は明らかに地元沖縄県警の動きも監視している。ウチナンチュ(沖縄人)同士の分断を図ろうとしているのは見え見え。彼らの気持ちを思うといたたまれない。でも、心はひとつという思いは変わらない」、「保釈はされたものの接見制限が厳しいため、逮捕現場など反対運動の拠点に近づくことは許されない。今回の講演のような場合も、行き先や主催団体などを事前に裁判所に届けなくてはならない。でも、国のお墨付きでこうやって全国行脚ができるんだから」…

 

 山城講演会が開かれたこの日、昨年4月にうるま市で発生した女性暴行殺人事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた元海兵隊員(当時軍属)だった被告(33)の裁判員裁判論告求刑公判が那覇地裁で開かれた。検察側は身勝手で残酷な犯行などとして無期懲役を求刑、判決は12月1日に予定されている。一方、山城さんらの裁判は12月4日に論告求刑、同月20日の被告最終弁論のあと、来年3月14日に判決言い渡しという段取りになっている。

 

  一方で、北朝鮮のミサイル発射や尖閣諸島をめぐる脅威論の高まりの中、与那国島や宮古島、石垣島などの先島地方で自衛隊によるミサイル配備計画が急ピッチで進んでいる。「標的の島ー風かたか」はそんな実態に迫った映画である。山城さんが唇をかみしめるようにして言った。「本島を含めた沖縄全体が要塞化されようとしている。”有事”はいつの時代でも権力によって作り出される。高江や辺野古での基地増強の動きも先島から県民の目をそらすためのダミ−ではないかとさえ思う時もある。2度と捨て石になることは許されない」。5日前の今月19日、酒を飲んだ米兵が運転するトラックに衝突され、軽トラックの男性(61)が死亡した。「基地あるゆえの犯罪や事故」―。「(日米)地位協定にがんじがらめにされ、憲法が届かない南の島のこれが実態なのです。逮捕者はすでに80人を超えています」

 

  「沖縄の未来は/沖縄が開く 戦(いくさ)世を拒み/平和に生きるため 今こそ、立ち上がろう/今こそ、奮い立とう」…。“ヒロジ節”の最後はいつも唄で締めくくられる。加藤登紀子の「美しき五月のパリ」を拝借した自作の「沖縄 今こそ立ち上がろう」が会場に響き渡った。唱和する声が広がっていった。それにしても、この人はどうしてこんなにも大きな心を持つことができるのだろうか。ふと、そう思った。「ウチナンチュは非武の民と言われてきた。長い受難の歴史を非暴力で戦い続けてきた自負がある。そんな時、不思議なことに希望が向こうから近づいてくるんです」と話し、「たとえば…」とこんなエピソ−ドを披露した。

 

 沖縄最大手の土建会社「金秀グル−プ」のトップが「基地建設に手を貸すのはまっぴらだが、基地の解体作業は一手に引き受ける」と宣言した。そうしたら、リゾ−ト開発最大手「かりゆしグル−プ」のトップが「そのあとはオレに任せてくれや。観光こそが平和産業だ」と応じた。ニコニコしながら、山城さんが語気を強めた。「これが希望なんです。希望があるからやれるんです」。私はこの話を聞きながら、足元で起きている「騒動」を思い出していた。復興支援を呼びかける地元の賢治愛好家グループに対し、その善意を妨害する「宮沢賢治学会」とは!?…。賢治は夢の国や理想郷を「イ−ハト−ブ」という言葉に託した。「南ニ死ニサウナ人アレバ/行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ」(「雨ニモマケズ」)―。そう詠われた南の島―沖縄は”桃源郷”という意味を込めて「ニライカナイ」と呼ばれる。

 

 「レンタカーで通り過ぎる時、ちょっとだけ窓を開け手を振ってくれるだけで嬉しいんです。ぜひ一度、米軍基地の現場に足を運んでください。南と北がこれからもずっとつながっていけるように」ー。イ−ハト−ブからニライカナイへ…。私たちは今まさに、その道行きに一歩を踏み出すべき時なのかもしれない。

 

(写真は沖縄の実態を伝える地元紙を手に講演する山城さん。紙面には根も葉もない沖縄批判を繰り広げる作家、百田尚樹さんの記事が載っている=24日午後、北上市本石町の日本現代詩歌文学館で)

 

 

 

《追記》〜25日付「毎日新聞」(電子版)

 ドイツ・ベルリンに本部を置く国際平和団体「国際平和ビュ−ロ−」(IPB)は24日、スペイン・バルセロナで今年のショ−ン・マクブライド平和賞の授賞式を行い、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する政党や団体でつくる「オ−ル沖縄会議」に授与した。同会議の高里鈴代共同代表(77)がメダルを受け取った。

 

 IPBはオ−ル沖縄会議の活動を長年にわたり米軍基地に反対し続けてきた「不撓不屈(ふとうふくつ)の非暴力闘争」と称賛し、満場一致で授賞を決めたとした。普天間飛行場については「世界で最も危険な軍事基地の一つだ」と指摘した。 高里さんは英語でスピーチし、米軍機の事故が繰り返されるなどしてきた歴史を紹介。今回の受賞で「世界中のより多くの人々が沖縄の現状を知るようになることを願う」と訴えた。高里さんと共に式に出席した同会議の安次富浩さん(71)は「われわれの草の根運動が国際的に注目されたことは、これからの沖縄にプラスになるのではないか」と話した。

 

 IPBはマクブライド平和賞をオール沖縄会議のほか、核軍縮や平和活動に尽力したとして、米言語学者ノーム・チョムスキー氏と英政治家ジェレミー・コービン氏にも授与した。 同賞はアイルランドの外相を務めた故ショーン・マクブライド氏の功績をたたえ、1992年に創設。平和や軍縮などの分野で活躍した個人・団体に贈られる。2003年に日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、06年には平和市長会議(現・平和首長会議)が受賞した。(共同)

 

 


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