もうひとつの“国難”―米軍ヘリが不時着・炎上:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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もうひとつの“国難”―米軍ヘリが不時着・炎上


 北朝鮮の脅威を煽(あお)ったような「国難突破」解散が公示された翌11日、もうひとつの“国難”が空から降ってきた。沖縄県東村高江で起きた米軍ヘリの「不時着・炎上」事故である(同日付当ブログで一部速報)。「オキナワ」を置き去りにしたような選挙戦のさ中、ひとつ間違えば大惨事になりかねない、この不思議な暗合は南の島からヤマト(本土)に向けられた怒りの表出ではないのか。忘れた振りをしているヤマトに対する決死の異議申し立てではないのか―。

 

 「民意と敵意」「暴力と抵抗」「弾圧と人権」「断絶と罵倒」「無法と葛藤」「破局と隷従」…。まるで今回の事故を予言するような言葉がずらりと並んでいる。『ルポ沖縄/国家の暴力―現場記者が見た「高江165日」の真実』というタイトルの新刊本をちょうど読んでいた。2016年7月11日、前日投票された参院選で安倍晋三政権が圧勝した翌日、ヘリパッド建設工事が再開された。以来同年12月22日、政府が「完成」宣言をするまでの「165日間」の地を這うような現場報告である。著者は「高江」や「辺野古」を守備範囲とする沖縄タイムス北部報道部長の阿部岳(たかし)記者である。本土出身の阿部記者は「はじめに」の中でこう書いている。

 

 「本土メディアがなかなか足を運べない沖縄の山奥には、この国の危機の縮図があった。制御を失った権力は、いつでも沖縄にだけ振り下ろされるわけではない。高江で倒れたドミノの連鎖は、少しずつ本土に近づくだろう。きょうの沖縄は、あすの本土である」―。本土からの機動隊を動員しての工事強行、陸自ヘリの資材搬入、沖縄平和運動センタ−議長・山城博治さんの不当逮捕と長期勾留、芥川賞作家・目取真俊さんに投げつけられた「土人・シナ人」発言…。こうした事態に向き合いながら、阿部記者は独白する。「戦後日本が表向き保障してきた人権や市民的自由が否定され、権力が意のままに振る舞う。これは戒厳令なのだ。そう説明するほかになかった」

 

 ヘリパッド完成を目前にした2016年12月13日、「辺野古新基地」建設現場に近い名護市東海岸にオスプレイが墜落・大破した。現場に一番乗りした同僚記者について、こう記している。「懐中電灯もないまま、滑ったり潮だまりに落ちたりしながら、ようやくたどり着いた岬の突端付近。この夜は満月だった。月明りに、岩とは違う大きな黒い影が浮かんでいる。『まさか』…。メーリングリストに投稿した。『目の前にオスプレイの機体があります』」―。少し遅れて現場に向かった阿部記者はヒ−トテックの上下をカメラバックに突っ込んで自宅アパ−トを飛び出し、コンビニに寄って、これでもかというほどの食料と水を買い込んだ。「12月の夜はいくら沖縄でも寒い」と述懐している。

 

 阿部記者は「希望と絶望」と題したエピロ−グをこう綴っている。「私は沖縄出身ではない。東京出身の『よそ者』である。だから『沖縄の心』を語ったり、沖縄の進路を論じたりする立場にはない。そうではなくて、自分の出身地である本土の人々に向けて報告するするつもりで書いた。本土の無関心によって、沖縄で何が引き起こされているか。…本土と沖縄の断絶の深さの前に、絶望と希望の間を行ったり来たりしたこの本ももう終わる。確かなのは、沖縄の問題は本土の問題であること。それに、本土の当事者意識がなければ解決しないことである。私も嘆いたり、他人のせいにするのではなく、ひたすら伝え続けることで責任を果たしていきたい。絶望と希望を超えて」

 

 今月22日、総選挙は投票日を迎える。民家のすぐ近くに無残な姿をさらけ出す米軍機とそんな恐怖におびえ続けなければならない沖縄の光景…。憲法が及ばない島を差しおいて、本土では「憲法」論議だけがやけにかまびすしい。私たち「よそ者」が「オキナワ」にどう向き合うのか―。そのことが問われる審判でもある。阿部記者ら地元紙のスタッフたちの取材はいまも夜を徹して続けられているはずである。

 

(写真は一面トップで米軍機事故を伝える、12日付の沖縄タイムス朝刊=同紙HPから)


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