「賢治」人脈図…藤圭子×宇多田ヒカル、そして中上健次〜無関心という“罪”:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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「賢治」人脈図…藤圭子×宇多田ヒカル、そして中上健次〜無関心という“罪”
2023.11.21:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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「メロディ−は誰かの心の原風景。懐かしい場所からのメッセ−ジ。リズムは死へ向かう生命の行進の音。歌は祈り、願い、誓い。音楽は慈悲」―。シンガ−ソングライタ−の宇多田ヒカルが自著『点—ten-』の中にこんな言葉を残しているということをある音楽通から教えてもらった。これって、賢治の感覚だな、とその瞬間に思った。実際、好きな作家の筆頭に宮沢賢治を挙げており、作品の多くにはその影響があちこちに見え隠れする。
「冷たい草の上に倒れ込み/火照る体を隠したい/真冬の星座たちが私の恋人…」―。たとえば、「テイク5」は賢治の代表作『銀河鉄道の夜』をイメ−ジしたと本人が語っている。かと思えば、「ぼくはきっとできるとおもう。なぜならぼくらがそれをいまかんがえているのだから」…『ポラ−ノの広場』のこんな印象的なセリフをさりげなく、自らのブログに書き込んだりもしている。さらにはお忍びで「宮沢賢治記念館」を訪れた際、駐車場のトイレの写真をツイッタ−に投稿するなどの茶目っ気もその人気の要因かもしれない。本人は自分のル−ツをたどりながら、こう記している。
「宮沢賢治の出身地は岩手県花巻。うちのおかあちゃんは北海道出身だと思われてるけど、実は生まれは岩手県それも花巻なのです!おじいちゃん(阿部家)の代よりも前から先祖はそこみたい」(2008年8月31日付ブログ)―。この「おかあちゃん」こそが「圭子の夢は夜ひらく」など数多くのヒット作を生み出し、演歌の女王と言われた藤圭子(享年62歳)である。生まれは正確には一ノ関市と言われているが、両親は旅芸人として北海道から東北地方を渡り歩いた。一時期、ふるさと花巻に居を置いたこともあり、当時を知る人は「まさに赤貧を洗うような生活みたいだった。狭いアパ−トに家族が身を寄せ合って暮らしていた」と語っている。
読書家としても知られる宇多田ヒカルは賢治と並んで、芥川賞作家の中上健次(享年46歳)を好きな作家に挙げ、とくに未完の大作『異族』に引き寄せられたとある対談で明かしている。被差別部落出身の中上はこの作品に在日2世やアイヌなどの“異族”たちを登場させながら、縦横無尽に”ヤマト”(大和=日本)に立ち向かう姿を描いている。
両親の仕事の都合で、ニュ−ヨ−クで生まれた彼女は40歳を迎えた今はロンドンに住んでいる。旅芸人の血を引いているからなのだろうか。はたまた「賢治」と「健次」という二人の「ケンジ」の世界を遊泳しているからなのだろうか…。宇多田ヒカルの夢の世界もとてつもなく、でっかい。読書のきっかけをこの天才ア−チストは「他者と、世界と繋がるための方法であり、手段だった」と語っている。6年前、推薦書籍を並べた「宇多田書店」が全国の38書店で展開された。「ケンジ」さんのほか、こんな作家の作品が店内を埋め尽くした。
開高健、芥川龍之介、川端康成、森鴎外、夏目漱石、三島由紀夫、稲垣足穂、谷崎潤一郎、埴谷雄高、大岡昇平、遠藤周作、司馬遼太郎、田村隆一、有吉佐和子、家永三郎、中西進、白洲正子、中原中也、ヘルマン・ヘッセ、オスカー・ワイルド、アン・クラーク・アモール、シェル・シルヴァスタイン、エドガー・アラン・ポー、エリ・ヴィーゼル、F・スコット・フィッツジェラルド、ジョージ・オーウェル、ダニエル・キイス、アンリ・ベルクソン、ロアルド・ダール、J・D・サリンジャー、ゲーテ、エリザベート・バダンテールなどなど…
宇多田ヒカルが愛読する作家のひとり、ノーベル平和賞を受賞したユダヤ人作家・エリ・ヴィーゼル(故人)はこんな言葉を残している。「愛の対義語は憎しみではなく無関心だ。人々の無関心は常に攻撃者の利益になることを忘れてはいけない」―。この戦乱の世界だからこそ、噛みしめたい言葉である。そして、それがユダヤ人作家の口から出たということ、さらには無関心を戒め、「寄り添う」ことの大切さを教えた賢治の理想郷「イーハトーブ」の住人としては、なおさらのこと…
(写真は一世を風靡した宇多田ヒカルの熱唱=インタ−ネット上に公開の写真から)
《追記―1》〜傍観は許されない
「歴史的な悲劇の傍観者であってはならない」―。ガザに派遣されていた看護師の川瀬佐知子さん(日本赤十字社)は帰国後、こう語った。「同僚医師は爆撃後に搬送された患者が自分の子どもたちだと気づく。1人はすでに死亡…。現地病院の現実を語る現地の状況を皆さんに伝えて、ひとりひとりの声っていうのは小さいかもしれないですけれども、その声が集まればメディアを動かして、そして国際社会を動かす、そういうことにつながるのではないかと私は信じています」(22日付「毎日放送」配信)
《追記―2》〜人質、解放へ
イスラム組織ハマスとイスラエルは22日、パレスチナ自治区ガザの戦闘を4日間停止することで合意した。戦闘停止中に双方が拘束・拘留している人を解放する。燃料や医薬品、その他人道物資の輸送も実施する。合意はカタールとエジプトが仲介した。ハマスの声明によると、ハマスが拘束する50人の女性と子どもを解放するのと引き換えに、イスラエルが捕らえているパレスチナ人女性・子ども150人を釈放する。人道支援物資や医薬品、燃料を積んだ数百台のトラックがガザ全域への搬入を認められる(22日付「ロイタ―通信」電子版)
《追記ー3》〜「イ−ハト−ブ(まるごと賢治)図書館」の実現へ向けて…病院跡地への立地を求めて、署名運動がスタート
花巻市内でフェアトレ−ド店を経営する新田文子さんが主宰する「暮らしと政治の勉強会」など三つの市民団体が、宮沢賢治ゆかりの地「イ−ハト−ブ」にふさわしい“夢の図書館”を目指した全国規模の署名運動を展開中。署名用紙などは以下からラウンロードを。11月23日必着。
★新花巻図書館は病院跡地に!の全国署名を10月1日スタートします。署名用紙のダウンロードはこちらから。集まった署名は11月23日必着でお願いします。
「全国署名を全国に広げます!〜これまでの経過説明」はこちらから。おいものブログのカテゴリ−「イ−ハト−ブ図書館をつくる会」は「夢の新花巻図書館を目指して」に変更しました。署名実行委員会の活動も報告していきます。新田さんのURLは以下から
https://oimonosenaka.com/