報道の使命はいずこへ!?…“御用新聞”と化す地元紙〜議会介入も何のその!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
報道の使命はいずこへ!?…“御用新聞”と化す地元紙〜議会介入も何のその!!??


 

 「図書館建設/若者の声聞いて」―。31日付地元紙「岩手日報」の論壇の記事を見て腰を抜かした。現下の最大の市政課題である新花巻図書館の立地場所をめぐる内容(コメント欄掲載)で、投稿者は市側が進める「駅前立地」について、若者の希望が多いとして賛成する立場を主張。一方の「病院跡地」を望む声には「大人の価値観を押し付けてしまって良いわけがない」と手厳しい。賛否を戦わす「甲論乙駁」に異を唱えるつもりはさらさらない。いやむしろ、大いに結構なのだが、逆に私はこの投稿を掲載した地元紙の「報道の使命」について、ある種の怖気(おぞけ)を覚えた。

 

 「報道の使命は、真実を広く伝え、市民の知る権利に奉仕し、人権を尊重する自由で平和な社会の実現に貢献することである」―。新聞記者を生業にしてきた一人として、この心得は記憶の奥底にこびりついて離れない「澱」(おり)みたいなものである。前置きが長くなったが、私は昨年10月10日付で以下のような投稿をしたが、5カ月以上たった今も掲載されないまま「ボツ」になった状態になっている。二つの投稿を良く読み比べていただきたい。この拙文が果たして「大人の価値観の押し付け」なのかどうか…。それどころ、不採用の背後には「報道の使命」を放棄し、”大本営”と堕(だ)したメディアの退廃が透けて見えてくるではないか。

 

 もうひとつ…当該投稿の中に議会における議員の一般質問に不当に干渉する部分があった。これは議員の「質問権」いや、言論の自由を否定する暴論として看過できるものではない。投稿者だけではなく、採否を決める新聞社側の自堕落ぶりは目を覆うばかりである。まさに、“御用新聞”と化した地元紙の無残な姿がそこにある。この日の投稿の“捏造”ぶりについては別途、反論の形で同じコラムに投稿したいと思う。新聞社側がその採否をどう判断かということを含めて、今回の問題は「言論の自由」の根幹にかかわる重大事である。以下の投稿は「病院跡地」への立地を求める、私自身の率直な気持ちである(投稿時の原文に事実関係の訂正など一部加筆)

 

 

 

 

 目の前にこつ然と現れた広大な“空間”に身を置きながら、「図書館の立地はここしかないな」と直感した。花巻市は10月11日から27日まで市内17か所で新図書館の建設場所をめぐって、意見集約のための市民説明会を開催した。その第1候補に挙げられているのがJR花巻駅前のスポ−ツ店用地で、当局側はその取得に前向きな姿勢を見せている。

 

 こんな折しもかつて、花巻城跡に隣接した旧総合花巻病院の移転・新築に伴って、24棟を数えた病棟が解体された結果、私たちは約100年ぶりに由緒ある遺跡など城跡のおもかげに接するという幸運に恵まれた。晴れた日には高台の城跡から霊峰・早池峰など北上山地の雄大な姿を望むができる。当該地は郷土の詩人で童話作家、宮沢賢治の作品にも数多く登場し、たとえば『四又(よまた)の百合』に出てくる“ハ−ムキャの城”とはすぐに、花巻城跡と察しがつく。

 

 さらに、賢治が学んだ現花巻小学校と自らが教壇に立ち、“桑っこ大学”とも呼ばれた旧稗貫農学校に挟まれたロケ−ションはまさに「文教地区」にふさわしい立地条件と言える。現在「まなび学園」(生涯学習都市会館)として、市民に学びの場を提供している場所もこの地に隣接し、かつては賢治の妹トシが学んだ花巻高等女学校(県立花巻南高校の前身)の建物だった。これもまた、歴史の奇縁かもしれない。

 

 実は「図書館法」(昭和25年4月)の生みの親が当地ゆかりの「山室民子」だということは地元でも余り、知られていない。慈善団体「救世軍」の創設者・山室軍平の妻で、花巻の素封家に生まれた旧姓・佐藤機恵子が民子の母である。民子は図書館法を起案するに当たって、生涯教育の大切さを訴えた。

 

 1世紀という時空間をへて、今よみがえった「百年の記憶」と未来を見すえた「百年の計」と―。解体工事で全貌を現した「濁り堀」について、専門家グル−プは「一級品の貴重な遺構。現状保存が望ましい」と答申した。将来は原形を維持したまま、“歴史公園”として利活用できるのではないか。夢は広がるばかりである。いまこそ、山室民子の“遺訓”を生かすべき時ではないかと思う。花巻小学校とシニアが集う「まなび学園」の間にポッカリと浮かんだ空間。まさに、天啓(てんけい)とでも呼びたくなる、“生涯学習”の場にふさわしい環境ではないか。「天啓」とは「天(神)の啓示」を意味する言葉である。「魂の癒しの場」―。世界最古の図書館といわれるアレキサンドリア図書館(エジプト)のドアにはこう記されているという。

 

 

 

 

 

(写真は3月31日付「岩手日報」と同日付の論壇原稿)

 

 

 

《追記》〜コメント欄に「図書館建設/若者の声聞いて」の論壇記事を全文掲載

 


2023.03.31:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
日報論壇「図書館建設/若者の声聞いて」(全文)

2023.03.31 [修正 | 削除]
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