上田市政の2期8年と「ドウリズム」の喪失…失われた8年:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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上田市政の2期8年と「ドウリズム」の喪失…失われた8年
2022.01.15:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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かつて、このまちに「ドウリズム」を掲げた首長がいた。旧花巻町長を2期務めた北山愛郎(1905―2002年)である。終生、中国の人民服である“国民服”を愛用し、社会党(当時)の副委員長にまで上りつめたが、町長時代のスロ−ガンは「ドウリズム」(道理主義)に徹していた。つまり、市政運営が「道理」に合致しているかどうかが「愛郎流デモクラシ−」の原点であった。昭和22年、社会党公認で激戦を制した北山はまだ47歳の若さ。母親の世代が「アイロ−さん、アイロ−さん」と叫びながら、選挙カ−の“追っかけ”をしていた光景を子ども心に記憶している。当の本人はその時の気持ちの高ぶりをこう記している。
「僕が何か一言話すたびに猛烈な拍手が起こり、女の人たちはボロボロ涙を流して泣き出し、自分でももう何を話しているのかわからなくなった。限りない感激だった。私は『もうひとつの政治』を発見した気がした。草の根にある政治の芽を見つけたのだ。物言わぬ大衆のなかに、本当に道理の感覚があることを知ったのだ。この人たちを失望させてはならない、期待に応えなくてはならない、と決意した」―。ひとり娘の郁子さんが父の想い出を書いた『ドウリズムの政治』(2010年)の中の一節である。市議会議員に初当選したばかりの私はガツンと一撃されたような衝撃に打ちのめされた。
「花巻に新しい風を!」―。2014(平成26)年1月26日、こんなスロ−ガンを掲げた新人が前職に1万票以上の大差をつけて、新しい市長に選ばれた。現職で3期目を目指す上田東一氏(67)である。北山と同じ東京大学法学部の出身で、商社マンとしての海外生活などそのまばゆいばかりの経歴も大勝の要因だったのかもしれない。「上田さんを勝手に応援する会」(「上田勝手連」)を立ち上げた私はさっそく、「同学の先輩の政治哲学をぜひ、市政に生かしていただきたい」と例の本を携えてお祝いに駆けつけた。「ありがたく学ばせていただきたい」―。こう述べた当時の上田氏のさわやかな表情をまだ忘れない。「きっと、イ−ハト−ブは生まれ変わる」と私はその時、確信した。
「ドウリズム」から「パワハラ」疑惑へ―。あれからさらに、長いようで短い8年の歳月が流れた。目の前の選挙の風景は目の錯誤かと思われるほどの様変わりを見せている。この間、わがふるさと「イ−ハト−ブ」には一体、何が起きたというのであろうか。「内心、忸怩(じくじ)たるものがある」などという安直な言葉を拒絶する声が聞こえてくる。「現職の横暴を許したのは一市民であると同時に議員経験もあるオマエの責任でもあるのだ」―と。いま、まるで攻守ところを変えたように、新人候補の小原雅道氏(61)が現職との一騎打ちに挑もうとしている。選択する側の責任がいまほど、問われることはない。新しい首長を選ぶ市長選は16日告示され、23日に投開票される。
(写真は「アイロ−」さんの愛称で親しまれたありし日の北山町長=インタ−ネット上に公開の写真から)