城跡…無惨、いまや蚊の発生源に!?:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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城跡…無惨、いまや蚊の発生源に!?
2019.07.23:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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“お化け街道”と秘かに名づけていた県道298号(山の神西宮野目線=旧国道4号)―その歩道を占拠し続けていた大量の雑草がある日突然、きれいさっぱり除去された。この一帯は「城内」の地名が示すように明治期まで南部藩下の花巻城があった由緒ある土地で、市の中心部に位置する一等地である。戦後、デ−タ通信の先駆けをつくった谷村新興製作所が立地し、現在は宮城県内の不動産業者の所有になっている。梅雨入りした直後から雑草は猛威を振るい始め、周囲の景観を損なうだけではなく、歩行の邪魔になるなどの苦情が私の所にも相次いでいた。
こんな時には「新興跡地」問題を舌鋒鋭く追及し続けてきた本舘憲一議員(花巻クラブ)の力を借りるのが一番手っ取り早い。「ボウフラもわくなど衛生上も問題だ。いまのところ、行政も動く気配がないようだ。この際、市民の代表である議員たちが率先して、草刈ボランティアを立ち上げてはどうか」―。「グッド・アイデア」と本舘さんも大いに乗り気だった。ところが、証拠写真を撮影した2日後の7月8日、現場付近を通ってみたら、あら不思議(!?)、跡地からはみ出していた大量の雑草がみんな消えてしまっていたという次第。県道を管理する花巻土木センタ−に問い合わせると、「スケジュ−ル通りの除去です」とのこと。「声なき声」が届き、一件落着と喜びたいところだったが、その発生源に目をやって、腰を抜かした。
「城跡、無惨。幽霊屋敷とはこのことか」―。県道を境にした花巻城址のたたずまいは雑草におおい尽くされ、かつてのシンボルの面影さえうかがい知ることはできない。スギナやドクダミなどはその根が地獄の底までつながっていると言われる。そう、まさにこの雑草たちのように、跡地問題の「根」も実に深い。忘れもしない、あれは「あっと、驚く」クリスマスプレゼントだった。
事の発端は5年近く前の平成26(2014)年12月17日にさかのぼる。新興跡地の民間業者への売却計画が浮上し、「公有地の拡大の推進に関する法律」(公拡法)に基づき、花巻市側に取得の優先権が与えられた。譲渡予定価格は敷地内の建物解体費用を含めて約7億7千万と試算されたが、この費用を相殺した結果、実売却額は100万円に設定された。この土地取引について、上田東一市長は「利用目的のはっきりしない案件に市民の大切な税金を投入するわけにはいかない」として、最終的にその年のクリスマスのまさにその日に「拒否」回答をした。この間、私を含む一部の議員の間からは「譲渡先とされる不動産業者は実態が不透明。土地の転売(土地ころがし)などのリスクはないか」などの懸念が出され、当の上田市長自身も「実はその点が心配だ」との認識を示していた。
その後の経過は懸念された通りに展開した。土地を格安で購入した不動産業者はその一部をパチンコ店用地として転売し、ホ−ムセンタ−の建設計画も華々しく打ち上げた。驚くなかれ、「パチンコ万々歳」と市側をバックアップしたのは革新系会派を中心とした議員たちだった。あれから5年―。お化け屋敷と化した新興跡地をめぐっては不動産業者と解体業者の間で契約金不払いの裁判沙汰が起きるなど収拾のつかない状態が続いており、競売にも買い手がつかない“塩漬け”のまま。解体された建物のガラは放置され、付近の住民は蚊の大量発生にも戦々恐々(せんせんきょうきょう)しなければならない。
ふと、「政治決断」とは何か―ということを考えてしまう。5年前のクリスマスの際、「もうひとつのプレゼント」(所有権移転)を市民が手にしていたなら…、そして、将来の利用計画については広く市民に問いかけるという選択をしていたなら……。「たら・れば」が許されるなら、いまの無残な城跡を市民は目にすることはなかったはずである。上田市長の先祖は花巻城の大改修工事(文化6年)の際に指揮をとった上田弥四郎氏(1768―1840)だと伝えられる。儒者としても知られたが、建築関係にも造詣が深く、「造作文士」とも呼ばれた。
「政治家とは将来のリスクまで含めて、時には大胆な決断を強いられる存在ではないのか」―。上田市長は無惨な城跡の光景を日々、どんな気持ちで眺めているのであろうか。後事を託した先祖に対し、どんな思いを巡らせているのだろうか。あるいは「市側もある意味では被害者である」という説得力のない弁明をこれからも続けるつもりなのであろうか……。参議院選挙が終わった荒れ野には無責任政治の残骸があちこちに転がっている。
(写真は私有地だという理由だけで放置されたままの城跡の雑草。景観だけでなく、衛生上の問題も浮上している=7月8日、花巻市御田屋町で)