▼一世紀ぶりに戻ってきた獅子頭2018/04/01 08:20 (C) 獅子宿燻亭7
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桜が近づくと気忙しくなる。
とある個人の方から獅子頭の塗り替えの話があり拝見した。
奥行き25cm程の小振りの幕付き黒獅子である。
作者は小関久蔵の作と思われる。
なかなかの逸品で小振りながら丁寧に仕上げられている。
作者名や塗師の記名は無いが、幕に明治35年と染め抜かれている。
小関久蔵は明治28年に総宮神社の獅子頭を制作していて、その時の塗師は
板垣安次郎という記録がある。恐らく高野町の板垣塗装店のご先祖かと推測している。
綿生地の獅子幕は長さ12cm、巾100cm、で三巾で縫製され、麻の前幕は長さ60cm
、巾30cmで苗字が染め抜かれている。
染めの作風は私のコレクションの明治27年の記名がある獅子幕にソックリである。
作風から白川橋の近くに染工場があり、そこで作られたのではないかと推測している。
記名には5月吉日とあり、その当時夭折した祖先のために、5月の節句の祝いに作らせた
獅子だろうという話である。
その後、いつしか親戚の家に移されてそのままになってしまったが、最近元の依頼主の家に
戻って来たのだという。
丁度その依頼主に男の子が生まれたので、その古い獅子頭を飾りたいので修理したいという相談
だった。依頼主の家は代々神社の総代を務め、その方は現在獅子舞の警固を務めている。
獅子頭の状態は傷も少なく大変良い状態で、洗浄処理をして研磨し、タテガミと金箔を直すと
遜色無い。黒い漆も少し褐色化し130年の歴史を物語っている。完全に塗り直しては逆に価値を
損なうだろうという事になった。
子を想う親の真心の籠った獅子頭は、一世紀後に再び子孫に伝えられ受継がれる事だろう。