▼「日本人ファースト」と映画「国宝」と…排外と包摂(ほうせつ)のはざまに漂う魂の交歓“〜2人の在日3世からの訴え!!!???
  「日本人ファースト」という狂気じみた絶叫を振り払いたい一心で、参院選の投開票が行われた20日、隣町の映画館に飛び込んだ。293席はほぼ満席で、最前列に残っていた1席に辛うじて、滑り込んだ。見上げるような目の前のスクリーンではきらびやかな歌舞伎の舞が狂うように踊っていた。  映画「国宝」(吉田修一原作、2025年)は仁侠一門に生まれた立花喜久雄(吉沢亮)が希代の女形にのし上がるまでの一代記である。監督は在日コリアン3世の李相日(イ・サンイル)さん。日本中の感動を呼び起こした「フラガール」(第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、2006年)を手がけたことでも知られる。本作は禁断の歌舞伎の世界に渦巻く「血筋や才能」、「信頼と裏切り」に切り込んだ作品で、いまや社会現象にもなりつつある。「あなた、歌舞伎が憎くて憎くて仕方ないんでしょう。でもそれでいいの。それでもやるの。それでも舞台に立つのがあたしたち役者なんでしょうよ」―。“人間国宝”の万菊(田中泯)が喜久雄にこう諭(さと)した刹那(せつな)、私はいきなり現実に引き戻された。  「バカ・チョン」発言(16日付当ブログ「追記―3」と「追記ー4」参照)―。今回の参院選で大きく躍進した参政党の神谷宗幣代表は終盤戦の応援演説で、「朝鮮人差別」をむき出しにして、こう言い放った。鬼気迫る喜久雄の名演技とこの発言との乖離(かいり)に一瞬、頭の中が真っ白になった。李監督は喜久雄の生い立ちについて、「その中に…外様というと語弊があるかもしれませんが、血筋ではない人たちも多々加わって、それぞれ長きにわたってファミリ―を“組成”してきたわけです」(パンフレットから)と語り、こう続けている。「(主演の吉沢が)どこからきたのか…出自が分からないようなたたずまいがいい」―  血筋や出自…。李監督はこうした”血”のこだわりを超越した地平にこそ、例えば歌舞伎のような真の伝統「文化」が開花するということを示したかったのではないか。「文化は国境を超える」ー。室町時代から江戸時代にかけて、朝鮮から日本に派遣された「朝鮮通信使」という外交使節団があった。主に将軍の代替わりを祝うために、国書を持参して日本へ。通信使は約400人から500人で構成され、訪日は12回にわたった。日韓の平和構築と文化交流の基礎をつくった当時の記録は2017年、ユネスコの「世界記憶」遺産に登録された。   スクリーン上では最後のクライマックスシーンの「曽根崎心中」が演じられていた。その瞬間、「日本人ファースト」というあの絶叫がウソのように耳の底から消えていった。まるで、敗者がどこかに身を隠すかのように…。(あるいは、これは私の空耳だったかもしれないが)割れるような拍手とともに、幕が下りた。満席の会場を眺めながら、私は「土俵際で踏んばったな。この国はまだ、大丈夫かもしれない。あきらめるのは早すぎる」と独りごちた。いまの時代状況を逆照射する映画との出会いに救われたような気持になったのである。  歴史修正主義者は少なくとも、修正されるべき”歴史”の存在を前提にしているのに対し、参政党の主張の中にはそもそも、その”歴史”そのものさえ存在しない。存在するのは、例えば「創憲案」という表現に見られるような歴史の”捏造”(ねつぞう)だけであり、これは十分に「犯罪」である。   (写真は吉沢亮が演じる女形の熱演=インターネット上に公開の写真から)    ≪追記ー1≫〜「日本人ファ―スト」と「国宝」…どっちが本物の“社会現象”か!!??  俳優の吉沢亮、横浜流星らが出演し、歌舞伎の世界を描いた映画『国宝』が、公開から46日間(6月6日〜7月21日)で観客動員数486万人、興行収入68.5億円を突破。社会現象とも言える盛り上がりを見せる中、本作が「第50回トロント国際映画祭」Special Presentation部門に出品されることが決定した。李監督の作品が同映画祭に出品されるのは、2006年『フラガール』、2013年『許されざる者』、2016年『怒り』に続き4作目となる(オリコンニュース)  ≪追記―2≫〜明日のディストピア  「排外主義者たちの夢は叶(かな)った」という一文でその本は始まる。「特別永住者の制度は廃止された。外国人への生活保護給付は明確に違法となった。公的文書での通名使用は禁止となった。ヘイトスピーチ解消法もまた廃された」。パチンコ店は風営法改正で、韓国料理屋や韓国食品店は連日の嫌がらせで廃業に追い込まれた。父が在日韓国人、母が日本人の主人公はふとつぶやく。「日本初の女性総理大臣が、あれほどまでの極右だったとは僕もすっかり騙された」  李龍徳(イ・ヨンドク)の小説『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』(河出文庫)の冒頭部分である。まるで参院選後の日本を予言するような戦慄(せんりつ)の近未来!現実との類似はそれだけではない。排外主義的な法改正は、中道左派の政党がほぼ絶滅し、神島眞平(かみじましんぺい)なる人物率いる極右政党「新党日本愛」が野党第一党に躍り出て、政権与党と政策取引をした結果だった。  作者は在日三世の作家で、初版は参政党の結党(2020年4月)に先立つ同年3月。「日本人ファースト」がどんな結果を招くかを、この小説は余すところなく描く。待っているのはヘイトクライムが横行する絶望的なディストピアだ。放置すれば事態はすぐここまで行く。極右の主張は感染力が高い。だからこそ対抗しうる言葉を発し続けることが必要なのだ(7月23日付「東京新聞」本音のコラム=文芸評論家、斎藤美奈子)     ★オンライン署名のお願い★   「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」と話している。  「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。  私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振るって署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。  ●オンライン署名の入り口は以下から https://chng.it/khxdhyqLNS  ●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba ・ヒカリノミチ通信(増子義久)  https://samidare.jp/masuko/ ・おいものブログ〜カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」   https://oimonosenaka.seesaa.net/              
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2025.07.21:masuko

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