「アイヌ」、そして「ウチナンチュ」ということ…:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
「アイヌ」、そして「ウチナンチュ」ということ…


 時折、新聞の広告欄に「アイヌ民族」という文字を見つけて、ギクッとすることがある。たとえば、日本の国体思想家、大川周明(故人)の『日本二千六百年史』の新聞広告については、2017年11月12日付当ブログで詳しく言及した。今年は明治維新「150周年」に当たり、その宣伝本として大々的に登場した。もうひとつはアイヌの食文化を宣伝する類(たぐい)のものである。たとえば…。「500万箱突破!本当に信じられるサプリメントを見極められるか!大注目のオオイタドリとは?厳しい環境でも生き抜いたアイヌ民族の知恵」―などと何とも仰々しい。

 

 オオイタドリは北海道や本州中部以北に生息する大型の多年草。古くから栄養強壮剤として食されてきた。アイヌ語では「イコクトゥ」と呼ばれ、若い茎を生で食べた。根茎は「虎杖根」という漢方としても使用されている。同じような野草に行者ニンニクがある。ネギ属の多年草で、北海道や近畿以北の亜高山地帯の針葉樹などの水湿地に群生している。ウキペディアによると、名前の由来は「山にこもる修験道の行者が食べたことからとも、逆にこれを食べると滋養がつきすぎて修行にならないため、食べることを禁じられたから」とも言われている。アイヌ語では「プクサ」とか「キト」と呼ばれる。一方で「アイヌネギ」という蔑称も陰でささやかれてきた。嫌な思い出がある。

 

 行者ニンニクはアイヌにとっても欠かせないは栄養食である。茎や葉、根はゆでて食べ、保存食にもした。体が暖まるので風邪薬代わりに、また熱が高い時は大きな鍋に干した葉を入れ、全身に湯気を浴びる“サウナ療法”に役立てた。また、強烈な臭(にお)いを病魔が嫌うと考え、病気が流行した時には戸口に立てて、魔除けにした。この「臭い」が「アイヌネギ」という差別語につながった。「お前ら、ネギばっかり食っているから、臭いんだよ」―。栄養満点のこの食材を決して口に運ぼうとしないアイヌの友人のことが私はいまも忘れられない。「アイヌ民族の知恵」という商魂たくましい謳い文句に接し、当時の友人の寂しげな表情を思い出したのだった。

 

 私にはぜんそくの持病がある。ある日、親しくしていたフチ(おばあさん)が「食べてごらん」と言って、紫紺色の実を差し出した。かみ続けていると、苦さがほんのりとした甘さに変わった。「ぜんそくや胃腸病にもよく効くんだよ。山は薬局みたいなもんさ」―。フチはこう言って、シケレペ(キハダの実)をポケットに入れてくれた。アイヌだけではない。最近は「長寿と癒(いや)しの島」をうたって、沖縄の食材をPRする新聞広告にもこと欠かない。このこと自体に目くじらを立てるつもりはさらさらない。でも、張り詰めた想像力の矢玉が思わぬ方向に飛んでいくことがママにある。「アイヌネギ」差別を打ち明けてくれた友人はその時、こんな風に話したのだった

 

 「最近、和人(日本人)社会では自然との共生とか、環境保護とかが叫ばれている。中にはアイヌ精神に学ぼうという人までいる。おれはこうした動きに時々、怒りを覚えるんだよ。アイヌに夢中になるというか、この思い入れがアイヌをいかに苦しめているかに和人は気がついていない。この言葉(アイヌ)がマスコミなどによって増幅される結果、いまでもまるで自然と一体となって暮らしているかのような美化されたアイヌ像が一人歩きしている。それが重荷になり、『アイヌ』から逃げ出してしまったり、逆にアイヌ自身がその言葉に酔ってしまう。普通にメシを食べ、時には酒を飲んで寝るという日常生活全体が私にとってのアイヌ文化だ」―。

 

 友人はこう話し、「観光客の中にはいまもクマの肉やサケを主食にしている、と本気で信じている人がいる。そんな時にはね」と言って、ニヤッと笑った。「ところでお客さん、チョンマゲと刀はどうしたんですか…」―。痛烈な言葉だったことをいまも覚えている。日本国内の”異文化“であるアイヌや沖縄の伝統文化を無条件に礼賛する、日本版「ミュ−タント・メッセ−」はちまたにあふれている(1月2日付の当ブログ(「ウ−マンラッシュアワ−」という知性と”善意の人族“」参照)

 

 アイヌ民族の同化政策を進める「北海道旧土人保護法」が制定されたのは1899(明治32)年。そして、ウチナンチュ(沖縄人)が本土の機動隊員から「土人」呼ばわりされたのは1年ちょっと前のこと。もしかりに「善意の人族」が、南と北の地で生み育まれてきた文化をただ消費するだけの存在だとしたら…。「土人」と蔑(さげす)まされてきた受難史などにはハナから無関心だったとしたら…。蝦夷征伐から琉球処分、そしてアイヌ同化政策へと連綿と続き、いまも続いている日本列島を貫く「支配原理」への加担、つまりこれはもうひとつの、抜き差しならない「差別」ではないのか―。

 

  8日、沖縄・読谷村にふたたび、米軍ヘリが不時着した。翁長雄志知事は「本当に言葉を失うほどだ。『負担軽減』『法治国家』という言葉で押し通していくことに大変憤りを改めて感じている。日本の民主主義、地方自治が問われている。単に1機1機の不時着の問題だけではない」(9日付「琉球新報」)と述べた。もし、この種の事故が東京のど真ん中で起きたとしたら、政府やヤマトンチュはどう反応するのだろうか。「反戦」彫刻家、金城実(79)さんは不時着現場からわずか2,3分の所にアトリエを構えている。電話の向こうから、豪快な高笑いが聞こえてきた。

 

 「よ〜し、わかった。ならば、誇り高き土人たる我らウチナンチュが、本物の土人である「本『土人』」(ヤマトンチュ)を見返してやろうじゃないか!!」

 

 

(写真は新聞広告に躍る「アイヌ民族」の文字=朝日新聞に掲載された広告から)

 

 

《追記》

 沖縄県警に8日午後4時50分ごろ入った連絡によると、同県読谷村の廃棄物処分場に米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)所属のAH1攻撃ヘリコプターが不時着した。ヘリには4人が乗っていたが、けが人はいないもよう。県警などによると、付近にはホテルなどがある。米軍や県警が詳しい状況を調べている。普天間飛行場所属のヘリを巡っては、6日に同県うるま市の伊計島海岸にUH1ヘリが不時着し、8日に撤去されたばかり。同飛行場所属機はCH53大型輸送ヘリの不時着、炎上や小学校運動場への窓落下、輸送機オスプレイの緊急着陸などトラブルが相次いでおり、沖縄では安全性への懸念が強まっている。

 

 小野寺五典防衛相は8日、防衛省で記者団に相次ぐ不時着について「多すぎる。沖縄の皆さんの心配は当然だ」と述べ、米側に整備の徹底や再発防止を求める考えを示した。県警などによると、米軍は着陸について、事故を避けるための「予防着陸」と説明しているという。(9日付「共同」電)

 

 

 

 

 

 

 

 


2018.01.09:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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