花巻市長―ご乱心「行状劇」(全四幕):はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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花巻市長―ご乱心「行状劇」(全四幕)


 

●第一幕〜『前代未聞』

 

 「まず、議員が先ほど触れたコ−ポレ−ト・ガバナンスについてですが…」―。花巻市議会12月定例会の私の一般質問(12月6日)に対し、上田東一市長は答弁をこう切り出した。当局側との申し合わせによって、質問内容は事前通告制になっており、今回は締め切り2日前の11月20日に提出。この際、担当職員に質問の背景などを説明するのが習わしになっている。質問時間は全部で1時間(60分以内)と決められており、質問内容の概要を登壇して説明した後、市長答弁を聞き、それを受けて再質問をするという段取りになっている。だから、当局側とはこの時間内での1分1秒を争う緊迫した対決となる。

 

 さて、質問したことにきちんと答弁しないことはママいや結構あるが、質問していないことに延々と答弁するということは寡聞(かぶん)にして聞いたことがない。今回、あらためて質疑の録音記録を再生してみて、その“前代未聞”の出来事が実際にあったことに気が付いた。最初は当方の思い違いかと思ったが、通告書や登壇原稿のどこを探しても「コ−ポレ−ト・ガバナンス」という言葉は出てこない。つまり、上田市長は質問していないことに答弁していたことが明らかになった。議場内での質疑応答が通告内容から逸脱することは双方にとって、厳に慎まなければならないル−ルである。今年、国会で「あったことをなかったこと」するという「加計」論議に関心が集ったが、わが足元では「なかったことがあったこと」なるという真逆の珍事に…。でも、どうして!?

 

 質問前日の11月5日付ブログで、私は一般質問への傍聴を呼びかける予告記事を掲載した(「12月定例会―ガバナンスのあり方を問う」、後に「12月定例会で”暴言”騒動―市長、ご乱心」へ改題)。その中で市民が質問趣旨を理解しやすいようにと前文で「コ−ポレ−ト・ガバナンス」(企業統治)について若干、言及した。善意に解釈すれば、上田市長が事前にこのブログを見て、私が登壇の際に同じ表現を使ったと勘違いしたことも考えられる。だとすれば、それほど目くじらを立てることでもあるまい。しかし、米国暮らしが長く、最高学府で法律を学んだ上田市長の立て板に水のような“長舌”は止まることを知らなかった。これに費やした時間はざっと10分間。逆に言えば、私の再質問の時間がその分、奪われることになった。

 

●第二幕〜『時間がなくなる!!…あせる質問者』

 

 やっと、通告した質問への答弁に移った上田市長の懇切丁寧な説明はさらに、延々と続いた。私の手元には5項目の質問に対する「再質問」が17項目にわたって準備されていた。時計とにらめっこしながら、次第に焦ってきた。「これで終わります」と上田市長が降壇した時、議場内の時計はすでに45分が経過したことを示していた。残された再質問の時間はわずか15分前後しかない。いずれも重要な質問だが、時間が限られているので瞬時に優先順位を判断しなければならない。市民から寄せられた要望をもとに◆嵜Πの再任用制度の運用と『理事』職の新設」と、ァ峪毀鮟蠅任龍Σ圓職員に対する人事管理上の対応」―の2点を取り上げることにした。イ虜銅遡笋飽椶辰浸、目の前の時計は「あと5分」を示す秒針表示に変わっていた。そして、信じられないことが起こった。

 

●第三幕〜『天地の逆転劇』

 

 イ虜銅遡笋涼罎濃笋蓮当局側と議会側との間のあるべき姿を示した「二元代表制」を念頭に配偶者同士が双方にまたがって配置されることの是非について問いただした。そうした実態があることを前提とした質問だったが、当然のことながら属性にかかわる質問ではなく、一般論としての見解をただしたつもりだった。これに対し、上田市長はいきなり「それは具体的にどなたのことでしょうか」と逆に聞いてきた。質問者に対する当局側の質問は「反問権」と呼ばれ、議長の許可が必要になる。そのことに触れないまま、小原雅道議長は答弁を促した。私は不本意ながら、その個人名を明らかにした。

 

 「通告の内容は職員を特定するものではありません。『職務設置に関する規則』についての質問であるので、ご留意ください」―。突然、小原議長が私に向かって、こう告げた。一瞬、キツネにつままれたような気がした。この留意発言は本来「個人名を明かせ」と求めた上田市長に向けられるべきものではなかったのか。結局、議事運営の流れの中で私は「市長の側がそう求めたからだ」と答えた。ところが、摩訶不思議…。この最後の発言から数十秒間が録音記録には残されていないことが分かった。操作ミスか装置の故障か…。私にとっては重要な「証拠」発言だけにこの「ナゾの数十秒」は永遠のナゾとして、残ることになった。

 

●第四幕〜『場外乱闘』

 

 普通ならこの行状劇は第三幕で幕を下ろす予定だったが、どうも問屋はそうは下ろしてくれなかった。定年退職した職員を再任用する制度は平成25年度から始まった。これに関連し、28年2月1日施行で「再任用に関する規程」が定められ、退職時の職務給が7級(部長級)の場合、再任用時の職務級は4級以下(課長補佐級)とする―と改正された。さらに、29年3月28日付の「行政組織規則」改正に伴い、「理事」職の新設が可能となり、今年度から理事1人が起用された。新設理由には「上司の命を受け、特定事項についての調査、企画及び立案に参画する」とあり、行政課題が広範囲にわたる昨今、この種の職種の必要性はむしろ高まっていると言える。

 

 こうした前提に立ち、私は実際の処遇が「7級」のままであることについて、その理由をただした。担当部長は「職務の困難度等に応じてこれに寄り難いとして、市長が特に認めた場合は、この限りでない」(「規程」第5条の4)と定めた条項を説明したうえで、「これを適用した」と答えた。これで一件落着と思いきや、最後の質問者が登壇する直前に“場外乱闘”が勃発したのだった。当然のことながら、私はこの質問に際しても個人名を口にしてはいない。質問の趣旨が人事管理(ガバナンス)の全般にわたることであるからである。ところが―。

 

 「やあ、〇〇さん(新理事の名前)。こっちは規則に従って手続きを進めているだけだ。個人情報に関することにいちいち答弁する必要はないんだよ。質問する方も質問する方だ」―。遅れて議場に入ってきた上田市長が突然、大声でこうわめき散らした。正直に答弁した担当部長に対する叱責なのか、あるいは質問者の私に対する当てこすりなのか…。ひょっとして、上田市長にとっては降ってわいた”災難”だったのかもしれない。しかし、個人情報を守る立場にある行政トップが逆にそのことに無頓着であることに私はゾッとさせられた。休憩時間内だったとはいえ、この事態に議場内は一瞬、凍り付いたような雰囲気に包まれた。行状劇はこうして最初と最後に実に不可解な印象を残したまま、フィナ−レを迎えたのだった。当局側と議会側はある種の”共犯関係“にあるのではないか―。残念ながら、そんな疑念がますます深まったような思いにさせられた。そういえば、あの大震災直後、ある議員が傍聴席の被災者に向かって、「さっさと帰れ」と暴言を吐いたことがあった。そして、今回の市長の”暴言”騒動―何とも似た者同士ではないか。

 

 

●閉幕に当たって……

 

 「イ−ハト−ブ劇場」(花巻市議会)で演じられた戯作の一方の主役である私は不思議な感慨を覚えた。たとえば、二元代表制にからんだ「共稼ぎ」問題―。上田市長は「適材適所の人事配置で、男女共同参画の考えからも何ら問題は生じない」と答えた。この認識に異議を唱えるつもりはさらさらない。同時に私は総務大臣を務めた元鳥取県知事の片山善博さん(早稲田大学教授)の「二元代表制」についての言葉を思い出した。「『(車の)両輪』は車軸で繋がっているが、通常二つの『車輪』には適度な距離がある。ところが、現実の多くの(ほとんどの)自治体では、『両輪』の間にほとんど距離がない。ぴったりくっついている。両輪が癒着した『一輪車』である。」(『世界』2016年12月号)―。今回の質問はこの認識に背中を押された結果だったことに触れておきたい。「一輪車」とは?理想的な配偶者像というイメ−ジとして…。

 

 ここまで書いてきて、「フェイクニュ−ス」という言葉が不意に口元に浮かんだ。「虚偽ニュ−ス」という意味で、米国のトランプ大統領が連発して波紋を呼んでいる。この種の言説が世界を席巻(せっけん)しつつあるようだ。すでに言及したように「あったことをなかったことにする」というある種の詐術が横行する一方で、私の質問に対しては危うく「なかったことがあったこと」になるという逆さまが成立するところだった。そこに悪意がなかったとしても、上田市長の冒頭答弁に私自身が即座に反論できなかったことに、この言説の怖さが潜んでいる。「戦争は平和である」―。イギリス人作家、ジョ−ジ・オ−ウェルの小説『1984年』に掲げられた独裁国家のスロ−ガンが現実味を帯びて迫ってくる…。想像力の射程がそこまで伸びていきそうな攻防劇だった。自らを戒める教訓として、記憶にとどめておきたい。「忖度」(そんたく)と「排除」が飛び交った激動の年も間もなく、幕を閉じる。

 

 なお、私の一般質問は12月10日(日)午後2時から、コミュニティFMラジオ「エフエムワン」(78・7MHz)で放送される(再放送は12月23日午後2時から)。合わせてお聞きいただければ、議場の様子がさらに臨場感をもって伝わると思います。

 

《追記》

 同上の「エフエムワン」で質疑内容を改めて確認しようとしたが、放送時間の関係からか、インターネット中継では収録されていた、小原雅道議長の”留意”発言以降のやり取りがカットとされていた。

 

 

(写真はジリジリしながら、再質問の原稿をチェックする質問者、つまり私=12月6日午前10時過ぎ、花巻市議会議場の再質問席で)

 

 

 

 


2017.12.09:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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