全日本お化け大会!?…”絶滅パワー”全開:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
全日本お化け大会!?…”絶滅パワー”全開


 最大級の敬意を表して、「全日本お化け大会」とでも名づけたくなるような集いが総選挙4日後の26日、東京都内で開かれた。ルポライタ−、鎌田慧さん(79)の半生をたどった『声なき人々の戦後史』(上下、藤原書店・聞き手、出河雅彦)の出版を祝う会。私自身もその一人である、世間では“絶滅危惧種”と呼んでいるらしい70代から80台前後の世代が何と200人以上も参集した。「今回の選挙でも立憲民主党が土壇場で踏んばった。オレたちをなめるんじゃない」。日本の政治のありように異議申し立てをし続けてきた人士たちはなお、意気盛んだった。おいしい酒にほろ酔い加減になりながら、私は思わずニンマリしてしまった。「日本中のお化けたちが集団で化けて出たみたいだな」

 

 鎌田さんの初期の代表作のひとつに『死に絶えた風景―日本資本主義の深層から』がある。46年前の1971年の刊行である。水俣病やイタイイタイ病などの公害問題、国鉄民営化や三池闘争などの労働問題、成田空港闘争や沖縄における米軍基地問題、狭山事件や財田川事件、袴田事件などの冤罪(えんざい)、反原発運動…。反逆人生50年で書きためた「死に絶えた風景」は単行本にして164冊にのぼり、取材範囲は沖縄・八重山から北方4島まで及ぶ。ある大学教授がルポライタ―の研究のため、その足跡を虫ピンで止めていったら、刺さり切れなくなってパラパラと落下したというエピソ−ドもある。「私は戦後社会の現実を、犠牲を押しつけられる側から見続け、そのような犠牲のない世の中にしたい想いでルポルタ−ジュを書き続けてきた」と鎌田さんは本書の中で語っている。

 

 佐高信、保阪正康、後藤正治、金平茂紀、石川文洋、大石芳野…。時代の同伴者たちが次々に壇上にかけ上り、祝福の言葉を贈った。小柄な女性が人波をかき分けながら、写真を撮っていた。「横浜事件」国家賠償訴訟の原告、木村まき(68)さんだった。戦時下最大の言論弾圧とされるこの事件で逮捕された、当時、中央公論社の編集者だった夫の故亨さん(享年82歳)らの名誉回復を求めている。特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認、安保法制、いわゆる「共謀罪」の制定、そして憲法改正へと進みつつある翼賛体制に抗(あらが)う空気が会場全体にみなぎっていた。その人脈の広さに圧倒された。

 

 「喜瀬武原空高く のろしよ燃え上がれ/平和の祈りこめて のろしよ燃え上がれ/歌が聞こえるよ はるかな喜瀬武原/皆の歌声は はるかな喜瀬武原」(3番)―。沖縄から平和を訴え続けているミュ−ジシャン、海勢頭豊さん(74)のギタ−の弾き語りが始まった。米軍の実弾演習阻止を託した「キセンバル」である。鎌田さんは沖縄取材も長く、7年前には『沖縄(ウチナ−)―抵抗と希望の島』を上梓(じょうし)している。30年来の友人である彫刻家の金城実さん(79)が、履(は)いていた下駄ならぬ雪駄(せった)を両手に握り、お家芸の“下駄踊り”を舞い始めた。武器を捨て「非暴力」を訴えるパフォ−マンスである。海勢頭さんの代表作のひとつ「月桃」が響き渡った。舞台に引っ張りだされた鎌田さんがニコニコ笑っている。

 

 つい数日前の悪夢を一瞬、忘れさせてくれるような光景が目の前に広がっていた。「3・11」を一緒に取材した時、鎌田さんが独り言のようにつぶやいた言葉がよみがえった。「反原発を訴えてきたつもりだったが、福島の事故を防ぐことができなかった。無力感だけが残った」―。最後にあいさつに立った鎌田さんがきっぱりと言った。「こんなに同志がいると思えば、まだ諦めるわけにはいかない」―。「そうだ」という声があちこちから飛んだ。

 

 帰りの新幹線の中で出版されたばかりの『新聞記者』という文庫本を読んだ。筆者は菅義偉・官房長官に対し、舌鋒鋭い質問を繰り出した東京新聞の女性記者、望月衣塑子さん(42)。バッシングや脅迫、圧力にもめげないで「新聞記者とは何か」を問うたドキュメントである。「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」―。望月さんはインド独立の父、マハトマ・ガンジ−のこの言葉を引用して、あとがきにこう書いている。「簡単には変えられないけれど、私自身が環境や周りに流され変わらないためにも。自分自身が正義と信じられるものを見失わないためにも。たとえ最後の一人になろうとも」

 

 11月3日(金)の文化の日、鎌田さんら全国市民アクションが主催する「安倍9条改憲NO!」国会包囲大行動が行われる。これに引き続き、今回の出版を祝う会の呼びかけ人の一人である沖縄平和運動センタ−議長、山城博治さん(65)を招いた岩手講演会(「沖縄とつながる岩手の会」など主催)が11月に開かれる。タイトルは「沖縄の基地の実態と平和を願うわけ―辺野古・高江の新基地に非暴力で抗う」―。24日(金)午後6時半から北上詩歌文学館、25日(土)午後1時半から盛岡サンビル7Fホ−ルで、いずれも参加費無料。「私たちは日本国民なのか。私たちに憲法は保障されているのか」―。不当逮捕され、長期勾留を余儀なくされた山城さんはこう叫びながら、全国を走り回っている。

 

 ”絶滅危惧種“の種(しゅ)はそれを絶やそうと思えば思うほど、忘れたころにむっくりと目を覚ますものである。たとえば、望月さんのように…。そう、絶滅危惧種は永遠に不滅なのである―。「沖縄はただ、平和でありたいだけなのです」という海勢頭さんの言葉がまだ、頭の中を駆けめぐっている。

 

 

(写真は海勢頭さんのギタ−演奏をバックに“下駄踊り“を披露する金城さん。「辺野古・高江は許さないぞ」という声が会場から飛んだ。右端が鎌田さん=10月26日、東京都千代田区の私学会館で)

 


この記事へのコメントはこちら
題名


本文


作成者


URL


画像

編集用パスワード (半角英数字4文字)


 ※管理者の承認後に反映されます。
ゲストさんようこそ
ID
PW

 合計 40人
記事数
 公開 2,847件
 限定公開 6件
 合計 2,853件
アクセス数
 今日 1,546件
 昨日 4,497件
 合計 7,482,403件
powered by samidare
system:samidare community