この酔狂な時代の片隅で:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
この酔狂な時代の片隅で


 22日の「国難突破」選挙の投票をすませた後、わが身に降りかかった“国難”ならぬ「災難」をふり払うため、あるコンサ−ト会場に足を運んだ。日本3大杜氏(とうじ)のひとつである南部杜氏の酒造り唄をCD化した「南部酒屋唄」の完成を祝う集まりである。岩手の農村地帯では約300年前の江戸時代から現金収入を補うため、冬場の農閑期に酒造りを支える職人集団を全国に派遣してきた。約半年間にも及ぶ“出稼ぎ”である。ふるさとや家族と離れた淋しさ、過酷な労働からの解放、働くもの同士のきずな…。そんな時、杜氏たちの口をついて出たのが酒造り唄だった。

 

 冬場の早朝4時、凍てつく寒さの中の中に桶や樽などの道具を洗う唄が聞こえてくる。この「流し唄」と同時に酒造りが始まる。米とぎ唄、添えつき唄、仲仕込み唄、三転(さんころ)つき唄…。作業手順に応じて、八つの歌があった。口承で歌い継がれ、歌えないと給料が半分に減らされる「唄半給金」という言葉もあった。丹波杜氏(兵庫)と越後杜氏(新潟)と並ぶ名人たちだったが、酒造りの技術革新に伴い、歌い手も少なくなった。花巻市石鳥谷町在住の音楽家、佐藤司美子さん(50)らが2年がかりで蔵人たちから聞き書きをし、元杜氏の伊藤賢治さん(75)ら4人が収録に協力した。

 

 この日のコンサ−トは「酒屋唄6重奏」(ピアノ、フル−ト、ヴァイオリン、チェロ、ベ−ス、ドラム)という異色のコラボレ−ション。伊藤さんらの野太いバックミュ−ジックと洋楽との融合が不思議な小宇宙をかもし出した。岐阜県で20年間、杜氏暮らしをしたという伊藤さんが思い出を語った。「酵母菌は生きもの。だから、酒造り唄を聞きながら生まれた酒はとびっきりの上等。丈夫な子どもを育てる子守歌のようなもんです」

 

 選挙狂騒曲に振り回された12日間―。日本の伝統文化を生かしたメロディとリズムがたまった疲れをいやしてくれた。それにしても酒でも飲まなきゃと思っていた矢先のイベント。偶然とはいえ、総選挙に合わせたような酒屋唄コンサ−トに乾杯!!と、かたわらのテレビがまたぞろ、狂騒曲を奏ではじめている。「自公大勝利」を伝えるアナウンスの声がやけに甲高い。いやはや…。

 

(写真は酒造り唄との絶妙なコラボを披露したコンサ−ト=10月22日午後、JR花巻駅前のなはんプラザで)


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