苦海浄土からのメッセ−ジ:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
苦海浄土からのメッセ−ジ


 

 まるで壊死(えし)したような言葉の群れが日本列島を覆(おお)いつつある。権力を手中に収めようとする者たちの本性が、そこに透けて見えてくる。「言葉」というものはいつから、こんなにも魂の抜け殻みたいになってしまったのか。10日、衆院選が公示された。ふと、“言霊”(ことだま)に触れたくなった。水俣病を引き起こした「苦海」を「浄土」と見立てた作家の石牟礼道子さんはいま90歳。私と13歳ちがいだが、誕生日は同じ「3・11」である。親しみが特段に深いのはそのせいかもしれない。瀕死の言葉たちを救い出してくれる「苦海浄土」からのメッセ−ジを、近刊の『花びら供養』からいくつか―。

 

 

●「道子さん、私はもう、許します。チッソも許す。病気になった私たちを迫害した人たちも全部許す。許すと思うて、祈るごつなりました。毎日が苦しゅうて、祈らずにはおれん…。何ば祈るかといえば、人間の罪ばなあ。自分の罪に対して祈りよっと。人間の罪ちゅうは、自分の罪のことじゃった。あんまり苦しかもんで、人間の罪ば背負うとるからじゃと思うようになった。そういうとき、人間の仇(かたき)ば取るぞとばかり考えよった。それで、疼(うず)きも一段ときつかったわけじゃ。許すという気持ちで祈るようになってから、今日一日ば、何とか生きられるようになった」(水俣病認定患者の故杉本栄子さん)

 

●後ろすざりしてゆく背後を絶たれた者の絶対境で吐かれたどんでん返しの大逆説がここにある。かねてこの人(杉本さん)はこうもいう。「知らんちゅうことは、罪ぞ」。光に貫かれた言葉だと思う。現代の知性には罪の自覚がないことをこの人は見抜いていたにちがいない。不自由きわまる体で、あらためて、水俣病とそこに生じる諸現象の一切を、全部ひきうけ直します、と栄子さんは宣言したのだ。皆が放棄した「人間の罪」をも、この病身に背負い直すぞとも言っているのではないか。自分に向かって、迫害する者たちにむかって、世界にむかって仲間たちに対して。

 

●日本語の「考える」という言葉をアイヌ語では、「魂がゆれる」というのだと知りました。魂がゆれるといえば思い当たります。私たちにまだ残っているあの、語らぬ思いや数かぎりない断念です。たぶんこれは近代的な権利意識とは無縁な、表現以前のデリカシ−です。それが今も、アイヌの地に魂の安らぐ時があって、人は言葉以前に魂同士、あるいは山川草木と共にゆれているというのです。風土の神々や、感性の安らぐところを自ら封じ込めてきた時代に追いつめられたあげく、近頃わたしは、舗装された地面を割って芽吹いている蓬や葦を見つけて歩きます。その小さな芽立ちに、遠い世のメッセ−ジが聞こえるからです。わたくし祖母ゆずりの、曇った青銅の鏡を持っているのですが、少し磨きなとせずばと思っています。沖縄の久高島イザイホウのような秘祭や、どこかの隅で、声を呑みこんだ口許が映り出るかもしれません。

 

●「野生のインディアン」の最後の一人として、カリフォルニア、サクラメント河の近くにあらわれた「イシ」のことが頭をよぎった。彼を保護し、友愛と尊敬を以て接した夫の研究を継ぎ、イシの物語を著したシオド−ラ・クロ−バ−は、白人文化とは隔絶して育ったイシが、きわめて洗練された誇り高い知性の持主であったことを、哀惜をもって書き綴っている。もっとも残酷なことは、往々にして文明的なよそおいのもとに行われるものだ。虐殺された最後の部族に一人であった「イシ」の中にあった誇りと愛。そこにはわたしたちがふれたことのない神霊的な響きのする詩の韻が、埋蔵されているように想われ、わたしは今も身悶えする事がある。

 

●ここでわたしはあえて宗教心を持ち出したくはない。極端に恥かしいからである。政治の舞台が痴呆日本を演じるのに腐心しているのに対し、民族としての鈍感な無意識界をキリスト教を含めた在来宗教が荷ってきたと思うからである。かつてその時代を苛烈に生きてきた開祖たちの教義を、これほど見事に食い潰しながら、民衆の苦悩の上に安坐して生きられる無自覚さを見ていると、いくらなりそこないのわたしでも、ああは生きたくないとせつに思う。小鳥たちの声を待ちながら目を醒ます朝、少なくなったとはいえ、幼い啼き声が成長しつつあるのを祈る気持ちで聴いている。彼らの成長に、希望のうすいこの列島の存亡がかかっているのだと、占う気持ちである。

 

(写真は病弱の中、いまも健筆をふるう石牟礼さん=インタ−ネット上に公開の写真から)

 

 

《速報》

 国頭地区消防本部によると、11日午後5時35分ごろ、「東村高江で米軍機が墜落炎上している」という通報があった。沖縄防衛局によると、墜落したのはCH53大型輸送ヘリコプターという。けが人の情報はない。東村などによると、墜落したのは米軍北部訓練場近くの民間地で、高江の車地区の牧草地。午後6時半現在、米軍ヘリが墜落現場の上空を旋回し、消火活動に当たっている。住民提供の写真では、炎と黒煙が上がっている様子が確認できる。
 

 東村高江に住む伊佐育子さん(57)は「黒煙が牧草地から上がっているとの連絡を受け、現場に駆け付けた。米兵がいっぱいいた。高江公民館からわずか2キロ先だ。政府に対し、私たちの命を何と思っているのかと怒りでいっぱい。これ以上(米軍機を)飛ばすことはしないでほしい」と話した。米軍機は県内でたびたび墜落事故を起こし、県民の不安や懸念が高まっている。最近では昨年12月、名護市安部で米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落した。2013年、キャンプ・ハンセンでHH60救難ヘリが墜落。2004年には宜野湾市の沖縄国際大学に海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターが墜落した(11日付「琉球新報」号外)

 

《注》

 東村高江はヤンバルと呼ばれる亜熱帯森林に位置し、約160人の住民が暮らしている。この集落を囲むように米軍のヘリパッド(ヘリコプタ−着陸帯)が6か所に作られ、すでに運用が始まっている。隣接するように米軍ジャングル訓練センタ−)(北部訓練場)があり、昼夜を問わず、米軍ヘリが飛んでいる。「新型機オスプレイが飛んだら、人が住めなくなる」と10年前からから非暴力の座り込みが続けられている。

 

 

 

 


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