ミサイルと地方自治:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
ミサイルと地方自治



 「北朝鮮の弾道ミサイルが東北地方を通過して岩手県沖に落下したという事件があった。仮にそういう不測の事態が起きた時に、たとえば花巻市の市街地にそれが間違って落下したというような場合に、(花巻)市長の立場で住民の生命や財産、安全を守るためにどう対処するつもりか」―。つい数日前の“ミサイル騒動”とは関係ない。ちょうど2年前の花巻市議会9月定例会での私の質疑の一部である。「北朝鮮からミサイルが発射された模様です」…8月29日未明、Jアラ−ト(全国瞬時警報システム)の緊急速報でたたき起こされた時、私が真っ先に思い浮かべたのは市民の「安心・安全」に無頓着な当時の行政の対応だった。上田東一市長はいわゆる“国の専管事項”論をタテにこう答弁した。
 
 「地方自治法上、防衛や軍事、安全保障などについては地方自治体は権限を有しない。市長には市の事務を管理し、執行する権限しかない」。これに対し、私は次のように反論した。「首長の第一義的な責務は住民福祉を守るということで、国の専管事項に関与することを一方的に排除するものではない。むしろ、地域住民の生活を守るという立場から、国政にも積極的に関わっていく権利と義務を有していると考えるべきだ」。原則論のぶつかり合いで議論は平行線をたどったが、不意に行政側の強弁のかげに「無知・無理解」が潜んでいることに心づいた。
 
 余り知られていないが、有事に際して国民を外部からの武力攻撃などから守るための法律が13年前の平成16年に制定された。正式名称は「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」と厳めしいが、一般的には「国民保護法」と呼ばれている。その第一条(目的)は次のように定めている。「この法律は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性に鑑み、これらの事項に関し、国、地方公共団体等の責務、国民の協力、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置その他の必要な事項を定める(以下略)」

 花巻市はこの法律に基づいて、平成18年6月に「国民保護協議会」を設置し、翌年19年2月には「花巻市国民保護計画」を策定した。「市は住民の生命、身体及び財産を保護する責務に鑑み…」と謳ったうえで、この計画には想定される武力攻撃(上陸侵攻、ゲリラ、弾道ミサイル攻撃など)に備えた避難実施要綱の作成、実働・図上訓練の実施、普及・啓発など4編(13章)からなるきめ細かい対応策が明記されている。2年前の質問の際、私はこの法律を引き合いに出しながら、対応をただした。ところが、上田市長自らが法律の存在自体を知らなかったうえ、35人以内とされた委員の任命もなされないままだった。市民の「安心・安全」は口先だけのものだったことが明らかになった。

 「できる限り頑丈な建物や地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)に避難する」(屋外にいる場合)、「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」(建物がない場合)、「窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」(屋内にいる場合)―。米朝間の緊張が高まる中、政府広報は以前にもまして、避難の呼びかけを強化している。国は3月以降、地方自治体と共同で住民避難訓練を12回実施してきたが、攻撃目標となる可能性が指摘される在日米軍基地や原発がある自治体は含まれていない。政府関係者は「基地や原発を抱える自治体でも実施するのが望ましいが、住民感情を考えると難しい側面もある」(8月31日付「毎日新聞」)として、反基地や反原発の感情を刺激することを懸念しているという。これではまるで米軍基地や原発を”人質”に取った、かつての沖縄戦における「捨て石」作戦の再現ではないのか。

 「当時はまだミサイルの行方がはっきりしていない状況。六ケ所村は日本原燃の施設があり、近くには米軍三沢基地がある。最悪のことを考えて休校にした」(8月30日付「朝日新聞」)―。今回のミサイル発射を受け、青森県六ケ所村にある県立六ケ所高校の丸谷浩基校長はこう語っている。その直前、かの地を訪れたばかりの私にとって、この言葉は他人事ではない(8月27日付当ブログ「Atomic―Bear」参照)。「備えあれば憂いなし」―を一概に否定はしないが、一方で危機感を煽(あお)るのに急な国とそれに追随するメディアに与(くみ)するつもりも毛頭ない。しかし、当市花巻の能天気ぶりは論外である。防衛や軍事、安全保障などは”国の専管事項”であると同時に、すぐれて「地方自治」に直結する課題である。最近の北朝鮮によるミサイル発射に伴う全国的な”パニック現象”がそのことを物語っている。
 
 「先程の北朝鮮のミサイルの一部が6時12分頃、襟裳岬東方の東約1180キロメ−トルの太平洋上に落下した模様です。不審な物を発見した場合には決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい」―。市当局は今回の緊急事態に対応し、「国民保護に関する情報」を逐次、HPなどで伝達した。本日9月1日、9月定例会が開会した。2年前にくらべて、危機管理能力が高まったかどうかについても質(ただ)したいと考えている。


(写真は道ばたの土管の中に身を隠す住民。新潟県内の避難訓練のひとこま=インタ−ネット上に公開の写真から)




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