がん哲学外来の話―4:生涯学習ノート

生涯学習ノート
がん哲学外来の話―4
5・『「使命感」次第で寿命は延びたり縮んだりする』

寿命を延ばす要素とはなんでしょうか。努力や考え方もあるでしょう。しかし最も大きな要素は「使命感」だと思います

思い1つで何とでもなる、と言う精神論ではありません。ただ、人間の思いはそのまま現実の行動に反映されていきます。例えば「死なない」と決意すると、治療に対しても積極的に心を開いて、前向きに受け入れようとする。心の柔軟性とか弾力性が出てくるのです

柔軟性は強さです。反対に、頑固さは脆さにつながる

柔軟性をもたらすものが「忘却力」です。がんであることは忘れていなくても生活の優先順位の下のほうにある。必要な治療は淡々と受けて、あとの時間は人生を楽しむために使おうとする忘却力が寿命を延ばすというエビデンスはもちろんありません。しかし長寿で表彰されるようなお年寄りを見ても、たいていは嫌なことは淡々とやって後に引きずらない。少なくても神経質そうな人はあまり見かけない

▲普通の人に「使命感」という言葉で答えを求めても明快な答えは返ってこないかもしれない

▲「食うて稼いで寝て起きて、さてその後は死ぬばかり」は一休さんの歌である
   さてその後は・・・のあとに自分には何があるといいきれるのか

年老いて寝たっきりになってしまった病人にも、末期がんの患者にも「使命感」はあるという
「死ぬという大事な仕事」をやりきるということというが、できるだろうか

▲「忘却力」は渡辺淳一の「鈍感力」に通ずる言葉かも
逆境にあっても「今」を楽しめる境地を目指していきたいものである


 6・『今の自分に「必要ないもの」は潔く捨てる』

 がんの治療は「決勝点を見通した視点」を持って行われる
「決勝点を見通した視点」というのは、道を走るその車を飛行機から俯瞰して見るイメージです
進んでいる方向が正しいと分かれば、安心して治療を受けてくださいと患者に伝えます

「もっと近道があるのではないか」「もっと快適に走れる道に変えたい」と患者さんが道を変えてしまったり、車から降りてしまうと、いい結果にならないことが多いからです

環境に合わせて自分を変えるということは、自分自身を捨てるということではありません。今の自分にとって必要のないもの、持っていても使えなくなったものを捨てることです

 いかに自己変革できるか。そのために必要のないものは潔く捨てる。がん治療という大きな壁を越えるとき、実はこの意識の持ち方はとても大事です

▲患者の自己責任において、正しい道を示してくれる病院と医師を自らが選び取るということも必要ではなかろうか

▲自分が自ら決定しているのか、その決定に納得しているのか・・と自分に問いかけながら受診していく

▲医師は正しい進むべき道を示してくれるだけでなく、伴奏者として患者に添って走ってくれることも大事と思う。しかしそのような医師は少ない。自力を頼りにして走るか
  
▲「潔く捨てる」ということは「がん患者」だけに求められていることではない
人間であれば求められること。がんになったことは意識転換のチャンス



2009.03.27:Copyright (C) 年だからでなく年がいもなく
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