映画「ぐるりのこと」:生涯学習ノート
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映画「ぐるりのこと」
2008.08.01:Copyright (C) 年だからでなく年がいもなく
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映画に期待する感動や、泣きどころというようなところはないのですが、いつの間にか感動したり涙ぐんだりしてしまいます
重くて暗いような感じがするのですが、何ともいえない可笑しさ、明るさと暗さ、絶望と希望のようなものがあって、生活感が漂っている映画です
自分の結婚生活43年の間にも同じようなことがあったなーと思い出させてくれる映画でした
題名の「ぐるり」は「自分を取り巻く環境」の意味だそうです
映画のなかに10年余り前の実際の大きな事件が、公判という形で出てきます
その大きな社会の状況のなかでの一つの夫婦の危機と再生を丁寧に描いていきます
夫婦の妻は小さな出版社で編集者として働いていますが、みごもった子どもを亡くしたために,心のバランスを崩して心療内科に通いだします
夫は刑事裁判での「法廷画家」の仕事についたばかりです
そのような夫婦がいつしか壊れかかろうとします
場面のなかで、妻が夫に対峙しながら泣きながら語りかける長廻しの場面は秀逸です
妻は夫に語ります、「近くにいるのに遠くに感じる・・・・」
観る人に、人と人との絆を問いかける場面です
妻の身内は夫が蒸発している母親、つぶれそうな不動産業を営んでいる兄夫婦と、身近にいそうな家族です
その身内の描き方が、独特のタッチできめ細かく描かれていて、面白さを付け加えています
身内役は倍賞美津子、寺島進、安藤玉恵などの個性的な役者が固めてインパクトある場面を作っています
夫役のリーリー・フランキーも持ち味を生かして好感がもたれますが、それ以上に妻の木村多江が素晴らしい演技をしています
ドキュメンタリー風のタッチの撮影の中で、混乱した妻を表現していく演技は迫力がありました
先ほどの夫と対峙する場面以外に、出版記念のサイン会で、泣き場所を求めて書店のなかを走り回る演技は印象的でした
本人の素地もあるかもしれませんがこの映画で今までの俳優にない何かを感じさせてくれる演技をしていて今後が楽しみです
上映時間2時間20分でちょっとくたびれます
でも観終わったあとはさわやかな気分になりました
夫婦が再生していく姿と、身内の話の落ち着き先がそういう思いにさせてくれるのでしょうか
登場人物はそれぞれ一生懸命に生きようとしています
その姿がこちらにも伝わってくるのです
勇気付けられる映画ともいえます