「沖小歌舞伎」最終公演①(白浪五人男編)【小国町】沖庭小学校:置賜の宝発掘プロジェクト(仮称)

置賜文化フォーラム
「沖小歌舞伎」最終公演①(白浪五人男編)【小国町】沖庭小学校



           

小国町立沖庭小学校で10月26日(土)、「沖小歌舞伎」の最終公演が行われました。
沖庭小学校は今年度をもって閉校となり、来年度からは小国小学校へ統合となります。
小学校統合とともに、山あいの集落に26年間続いた歌舞伎も幕を下ろします。
子らの花道もこの日で見納めです。

子ども達、卒業生、先生方、地域住民、様々な人々の思いが詰まった最後の「沖小歌舞伎」
子ども達の最後の勇姿を取材してきました。


第26回沖小歌舞伎最終公演

■沖小歌舞伎
演目:「白浪五人男~稲瀬川勢揃いの場~」
   「絵本太功記 九段目~山崎合戦の場~」
■古田歌舞伎定期公演
演目:「弁天娘女男白浪~濱松屋見世先の場~」


沖小歌舞伎は、沖庭小学校の子どもたちが取り組んでいる体験学習で、学区内の古田地区に伝わる地元の伝統芸能「古田歌舞伎」を学んでもらおうと、古田歌舞伎保存会の方々よりご指導を受けて、これまで地元の人たちや保護者など、地区の住民が協力して、歌舞伎の舞台づくりを支え、一緒に作り上げてきました。

山あいの古田地区に歌舞伎が伝わったのは江戸時代末期とされています。
江戸時代末期からはじまった農民芸能「古田歌舞伎」は、1958年を最後に一旦途絶えたものの、1986(昭和61)年に住民らの手で「古田歌舞伎」が復活、町の無形文化財にも指定されました。
「沖小歌舞伎」はその2年後に、体験学習の一環として始まりました。
例年、古田歌舞伎保存会から指導を受けて演技を学び、毎年古田歌舞伎と沖小歌舞伎が合同で公演を行ってきました。


準備風景

化粧を施すのは保護者の役目です。
 
絵本太功記の加藤正清役

絵本太功記の剣尻和尚役
 
弁天小僧菊乃助役も仕上げの段階です。


「絵本太功記」四王天但馬守役の5年生児童


子どもに化粧を施すのは保護者の役目となり、「古田歌舞伎保存会」の尾上昇十郎(本名・斉藤昇平)会長、古川幹平(本名・安部幹雄)副会長らが学校を訪れ、保護者を対象に化粧や着付けの講習会を開いてきました。

沖小歌舞伎の特徴は、地域の協力のもと、学校カリキュラムに歌舞伎が組み入れられていることです。
例年は、6年生が5年生に教え、5年生を中心に、10月の本番に備えてきましたが、少子化は急激に進み、昨年は人数が足りず、3年生以上が出演。
そして今年は閉校ということもあり、全校児童22人が出演することになりました。

全校児童22人は4月から基本的な練習を始め、9月からは保存会メンバーのご指導のもと、本格的な練習を毎日放課後、1時間半行ってきたといいます。

9月、10月の毎週金曜日は夜9時半の夜遅くまで練習に励んでいたそうです。


会場となる沖庭小学校体育館

古田歌舞伎・沖小歌舞伎合同公演のステージ
 
約350名の観客が集まりました。

26年間の感謝の意をご指導者に捧げる小杉慶子校長
 
小杉慶子校長よりご挨拶


保護者、地元住民、集まった卒業生ら約350人が集まった体育館。
演目の前に、26年間ご指導してくださった「古田歌舞伎保存会」の方々に校長より表彰状が贈呈されました。

小杉慶子校長は、
「沖庭小学校は残念ながら本年度をもって閉じることとなり、沖小歌舞伎も最終ということになりました。今年の公演にあたりましても、保護者、地域のみなさま、古田歌舞伎の皆様、町内の小中高等学校、など沢山の方々からご支援をいただき、暖かい応援をいただきました。
本日は、先輩として歌舞伎を経験されたみなさま、歴代の教職員のみなさまにも見守って頂き、多くの方々の前で公演できますことを重ねて感謝いたします。
閉校の年にめぐりあわせた子ども達は、自分の役割をよく理解し、4月から稽古を重ねてきました。
本日はみなさまや、また26年間にわたり指導してくださいましたお師匠様に感謝をこめて、1年から6年生まで22名全員で2演目を実施いたします。」とご挨拶を述べました。


舞台清めの舞い「寿式三番叟」

舞台清めの舞い「寿式三番叟」
 
古田歌舞伎の演者が舞う

オレンジ色の着物が美しい
 
華麗な舞を披露


沖小歌舞伎の前に、舞台清めの舞いである「寿式三番叟」が、古田歌舞伎の演者によって舞われました。

カンカンカン――。と、拍子木の音が響き、体育館の舞台の幕が開きます。
袖からゆっくり歩いて出てきたのは、オレンジ色の着物に身を包み、化粧をほどこした古田歌舞伎の演者です。
華麗な舞を披露しました。


白浪五人男~稲瀬川勢揃いの場~

舞台袖で待機する児童ら5名
 
南郷力丸を演じる4年生の男子児童


演目の前に、舞台袖にお邪魔しました。
南郷力丸役の4年生の男子児童は、「教頭先生に迫力でるようにといわれたので、迫力と、声を出すように頑張りたいです。」と意気込みを話してくれました。


花道より弁天小僧菊乃助の登場
 
花道より忠信利平の登場

花道より赤星十三郎の登場
 
花道より南郷力丸の登場

花道より日本駄右衛門の登場
 
白浪五人男が揃う


この「白浪五人男」の正式名は、「青砥稿花紅彩画 稲瀬川勢揃いの場(あおとぞうしはなのにしきえ いなせがわせいぞろいのば)」という歌舞伎台本です。

このモデルとなったのは、延享4年(1747)に獄門になった日本左衛門の一味です。
ここに出てくる五人は、いずれも天下に名高い大泥棒達ですが、大金持ちから盗みはしても、弱いものいじめはしないという「義賊」と一般の人たち呼んで、かげで拍手をしていました。
特に中心人物であった五人を白浪五人男(弁天小僧菊之助、南郷力丸、日本駄右衛門、忠信利平、赤星十三郎)と称しています。

花道から、一人一人違った模様が入ったおそろいの紫の衣装と傘といういでたちで登場します。
錦絵のような見た目の美しさも一つの見所です。








ステージに照らし出された白浪五人男。
桜の紙吹雪が舞い、堂々たるいでたちを魅せました。

見守る保護者から「日本一!」「大統領!」とかけ声が飛び交い、
華麗な衣装に身を包んで披露する子ども達の姿に、集まった観客ら約350名が食い入るような表情で見詰めていました。


見得を切る日本駄右衛門
 
見得を切る弁天小僧菊乃助

見得を切る忠信利平
 
見得を切る赤星十三郎

見得を切る南郷力丸
 
美しく、勇ましく、それぞれの役柄を堂々と演じ切る


舞台に移った5人は七五調のリズミカルな調子で一人一人名乗りを上げ、見得を切ります。
ここがこの演目の最高の見せ場です。

大声で名乗りを上げる児童は美しく、勇ましく、それぞれの役柄を堂々と演じ切りました。









最後の舞台で「白浪五人男」を熱演する児童
 
役人と闘う姿


沖庭小学校の児童は、上級生が演じる「沖小歌舞伎」を見て育ち、誰もが主役を演じたいと憧れを抱いているとお聞きしました。
「白浪五人男」と「絵本太功記」の2演目では、セリフが与えられた役どころは限られています。
春から希望を取り、オーディションで役を決めるそうです。

役を与えられてからは、1学期からは総合学習の時間でセリフ覚え、2学期からは放課後も使い、ステージと花道を使用し、セリフに合わせ、動きを猛練習してきたといいます。

古田歌舞伎保存会の安部幹雄さんは、「児童はみな、閉校と最終公演の意味を深く理解しており、気合いや気持ちが演技の中に見えていた。
児童の思いと緊張感が、観客に伝わり、最終公演にふさわしいキレのある演技になった。」と話してくださいました。


沖庭小学校校舎

小国町沖庭小学校
 
「沖小歌舞伎」26年の軌跡が飾られています。

階段の踊り場にも、過去の写真が飾られています。
 
小学校の図書室


校舎内には、あちらこちらに26年間続いた「沖小歌舞伎」の過去の写真が飾られていました。
「沖小歌舞伎」がいかに小学校にとっての誇りだったか伝わってきます。
同時に、山あいの集落に26年間続いていた歌舞伎が終わってしまうことに寂しさも感じました。

「沖小歌舞伎」は終わってしまっても、歌舞伎をやってきたことを一生忘れずにいて欲しいと思います。


一度ではお伝えしきれなかったので、
次回の記事では、2演目目の「絵本太功記」をお伝えします。
緊張感の中にも、ひょうきんな和尚(おしょう)と村人たちがとてもいい味を出していました。
会場は多くの笑いに包まれていましたので、次回の記事もぜひご覧ください。


置賜文化フォーラム編集員の文化リスがお送りしました。





○取材日    平成25年10月26日(土)
        詳細:第26回「沖小歌舞伎」最終公演
        場所:小国町立沖庭小学校(小国町)

○取材協力   古田歌舞伎保存会(会長 斉藤昇平さん)
        小国町立沖庭小学校(小杉慶子 校長)









2013.10.28:Copyright (C) 置賜文化フォーラム
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